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タウム1

Author:タウム1
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「自分の感性くらい 自分で守れ ばかものよ」 茨木のり子

この言葉を肝に銘じて、本や映画を鑑賞しています。
やっぱり読書はいいですね。
いつも何かしらの本を読んでいます。
ミステリーから純文学まで・・。
特にノンフィクションはやめられないですね。
知らなかったことがわかる快感、魂の解放って感じで・・・。

オススメ本・・・「おそめ」 伝説のホステスの生涯。何ともいえない思いになりますよ。 「わたしを離さないで」 この気高く、奥深い感じ。小説の魅力に満ち溢れてます。 オススメ映画・・「イン・ザ・ベッドルーム」 二人の女優の演技にホレボレします。  「ザ・コンテンダー」 信念を貫くとはこういうこと。強いメッセージを感じますよ。

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連鎖する十代の殺人。    一橋文哉 著  「人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相」
「人を、殺してみたかった 名古屋大学女子学生・殺人事件の真相」
一橋 文哉 著



日本中を震撼させた、
名門大学の女子学生が起こした殺人事件のノンフィクション。
犯罪を起こした少年少女は更生できるという前提の今の法体系や更生プログラムが、
限界を迎えているという現状を強く実感しました







名門の名古屋大学の女子学生が知り合いの女性を自宅アパートで殺害した事件。

事件と犯人の女子学生について知れば知るほど、
どうして犯行に及んだのか、
ますますわからなくなりました。


女子学生は仙台出身。
仕事で毎日忙しくしている母親と、
研究に没頭し、仕事らしい仕事をしない父親の、
すこしゆがんだ家庭でそれまでを過ごしている。
仕事をしない父親に母親は厳しくあたっていたらしい。
そんな息苦しい環境から逃れるために、
名古屋大学に進学したそうだ。

化学や薬物に魅せられていた高校時代。
そのころすでに同級生に毒をもり、
失明状態にする事件を起こしている。
しかし事件は体面を気にする学校と、
警察の捜査怠慢でうやむやになってしまう。

また女子学生は動物を実験台にして毒の効能を試したりしている。

すでに異常な兆候はいろいろなところで現れていた。
同級生が失明した事件がもっと捜査されていれば、
新たな被害者は出なかったかもしれない。


動物を殺したりする兆候は、
神戸の酒鬼薔薇少年でも確認されていて、
共通している。


この女子学生が特徴的なのは、
過去に人を殺した(殺そうとした)若い殺人者たちを
崇めたてているところだ。
酒鬼薔薇はもちろん、秋葉原で車を暴走させた男や、
静岡で母親に毒ももった少女など、
事件について詳しく調べて、
その人物にあこがれ、自分を重ね合わせている。

大学に入り、一人暮らしになってからは、
SNSに毒のことなど
さまざまなつぶやきを書き込んでいることにも
驚いてしまう。
自由を手に入れた女子学生は、
妄想を現実にして人を殺してしまう。
計画的なようであり、場当たり的でもある、
幼稚で中途半端な犯行。


殺人者にあこがれる心理。
どうしても理解できない。

恐ろしいのは、十代が起こす猟奇殺人事件は、
確実に連鎖しているという事実。
ネットの発達が少なからず影響していると思う。
今後も新たな殺人者が、現れるだろう。
取返しがつかない事をする前に、
まわりのおとなが気付ければいいのだが。


女子学生の殺されたのは、
宗教の勧誘に訪れた、エホバの証人の教徒の老婦人。
老婦人に対しては普通に対応していた女子学生だが、
実際は熱心な勧誘に反感を感じていたようだ。

優等生だったという女子学生。
家庭環境の影響なのか。
親への反発からなのか。


現代の若い殺人者は少年法や刑罰などを、
よく知っていて、
その上で犯行に及んでいるというもの恐ろしい。

そんな若者の凶悪な犯罪に、
現在の法体系や処罰のシステムが合わなくなってきていると、
著者は警告している。
若者は更生できると考える現在の少年法。

酒鬼薔薇が本を書いたり、
ネットでヌードをさらしたりしている事実を知ると、
著者の警告が的を射ているように感じる。











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ノンフィクション | 00:00:00 | Trackback(0) | Comments(0)
もがき続ける中東の国々   田原 牧 著 「ジャスミンの残り香  アラブの春が変えたもの」
「ジャスミンの残り香 アラブの春が変えたもの」
田原 牧 著



理想の社会を目指して、もがき続ける中東の国々の今の姿。










若い頃に中東の大学に留学していたという著者。
アラブの春で中東がどう変わったかを知るために、
中東を訪れて、その状況を報告している。


日本人から見ると、複雑に入り組んでいるように見える中東の国々とその情勢。
本書を読んでもそれがすっきりと解消されるわけではない。
(むしろもっと混乱するかも・・・それはないか)
とにかくいろんな派閥や氏族やグループが乱立していて、
それらの利害関係が複雑に絡み合って、
今の中東の情勢を理解するのは専門家でも難しいかもしれない。

著者はその中東の国々の報道される姿とは別の姿を
市井の人々の声も紹介しながら伝えている。
レポートの合間に、中東に関する考察や、
これまでの中東の国々の対立なんかの解説もあり、
その辺はとても参考になる。

ただ、専門用語や中東独特の表現が混じっていて、
文章としてはかなり読みにくかった。
(単語をメモしながら読み進むと理解しやすいかも)

日本でよく聞く単語も著者のこだわりで、
ちょっと違って表記されていたり。

スンニ派  ⇒ スンナ派
アラファト ⇒ アラファート
カダフィー ⇒ カッザーフィー
ヒズボラ  ⇒ ヒズブッラー

ちょっとしたことだが、なんか気になってしまった。
表記としては著者の方が近いのかもしれないが。


大規模なデモの民衆の力が独裁政権に終止符をうたせることにつながったが、
少し前の日本の反原発のデモと比較して失望しているところも印象に残る。

誰もが(中東の人だろうが日本人だろうが)等しく、
もっといい社会を目指しているのは同じだと思うが、
中東の人たちの今を変えようとか、
自分たちの理想を現実にしようとして、
常に行動しているその情熱にただただ感心してしまう。
格差や貧富の差が激しいことから来るのかもしれないが、
反原発の気運が高まったと思いきや、
結局まるくおさまってしまう日本人とは大きく違う。
日々の生活を投げ出しても、
今を変えようとするその原動力は何なのか。
どこから来るのかをもっと知りたいと思った。


独裁政権が倒れて初めてわかった中東の混乱。
独裁政権がそれまであった、
軋轢や確執を抑えていたのだと思うと、
少し複雑な気持ちになる。
それでも、多くの市井の人々は革命を起こしてよかったと口にしていた。
以前より生活が苦しくなっても、
そう言える中東の人々の覚悟がうらやましい。

何のために生きるのか。
幸福とは何なのか。

物があふれた日本で、
中東の人々の姿に触れると、
否が応でもそれらを考えさせられる。


アラブの春は革命だったのか。
そもそも革命とは何なのか。
これまでの革命で成功した革命はあるのか。
そんなことも深く考えさせれれる。

革命とはプロレタリアートが行政機関と全国家機関とを破壊して、
それと武装した労働者からなる新しい機関と取り換えることにある

レーニン



革命とは自由の創設のことであり、
自由が姿を現すことのできる空間を保障する政治体の創設のことである

ハンナ・アーレント




著者が日本がデモや運動で激しかった時代の息吹を
受け継いでいることが伝わってきた。
そして中東の人々の熱い生き方への憧憬のまなざしが、
文章のあちらこちらからにじみ出ているように感じた。









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ノンフィクション | 13:29:19 | Trackback(0) | Comments(0)
稀代のペテン師と地味で無欲な天才音楽家。  神山典士 著  「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」


「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」
神山典士 著


ゴーストライター騒動で世間を騒がした佐村河内事件。
そのきっかけを作った著者が事件発端から事件全貌を綴ったノンフィクション。
多くの人を欺いてもまったく悪びれない、生まれついてのペテン師がここに実在する。






言わずと知れた佐村河内事件。

週刊文春の告発がきっかけとなったのはみなさんご存じだろう。
その記事が掲載されるまでの過程やいきさつも本書では語られている。

著者は生まれながらにして片腕が不自由な少女(みっくん)を取材していた。
みっくんはハンデがありながらもヴァイオリンを懸命に練習して、
音楽会などで演奏を披露していた。
その様子を著者は本にまとめようとしていたのだが、
その取材の途中でみっくの家族(大久保一家)から、
当時みっくんに曲を提供してくれた音楽家の佐村河内には
実はゴーストライターがいるということを知らされる。

真偽を確認しようとゴーストライターだという音楽家に会い、
話を聞くと驚愕の事実が明かされる。
その音楽家こそ記者会見で世間から注目された新垣隆氏だった。


佐村河内事件に興味があっただけに、
冒頭から一気に惹きこまれてしまった。

稀代のペテン師、佐村河内の人生と、
地味な音楽家、新垣さんの人生が、
偶然にもクロスしてしまう。
その時から、二人の偽りの人生が18年続くことになる。

一方はただただ有名になりたいという野心や欲望だけを頼りに、
生きていた男。
一方は学生時代からその才能を認められ、
大学卒業後はすぐに母校に迎えられるが、
まったく欲望のない地味な男。

その二人のあまりにも対照的な人生が印象深い。
ペテン師とゴーストライター。
18年続いた歪な二人の関係も興味深かった。


佐村河内のペテン師としての才能(と言っていいのか)にも、
驚かされる。

被爆2世ということ。それに加えて、聾者を装い、
弱者として同情心集めて世間から注目を浴びる。
また、被災者や障害者に近づき、
曲を送ったり、見舞ったりして、
その様子をマスコミを利用して世間に広める。

日光に弱いからとサングラスをかけ、
体がきついと杖をついて人前に出る。

驚くべき、自己弱者化プロデュース力。


長髪でサングラス姿の佐村河内を初めてテレビで見た時、
何てインチキくさい奴なんだ、と思ったのを覚えている。
なぜこんなにメディアで取り上げられるのか不思議だった。

本書にはその理由も書かれている。
それは五木寛之と、アメリカの雑誌・TIME。
五木寛之は佐村河内の自伝(内容は虚偽だらけらしい)の帯を書いたり、
自身のテレビ番組の音楽を佐村河内に依頼するなど、
このペテンに大きく加担している。
五木寛之の存在でメディア担当者は簡単に騙されてしまったのだろう。

佐村河内は、ゲームの「鬼武者」で音楽を担当した際に、
掲載された雑誌「TIME」をことあるごとに、
人に披露して自分が才能ある本物の音楽家であることをアピールしている。

それはメディアの担当者には効果てき面で、
多くのテレビ番組や雑誌、新聞で取り上げられる。
それでもインチキくさいと放送や掲載をとりやめるメディアもいた。
(調べると経歴や言動に怪しいところが出てきたからだ)
やはり直観を信用するべきなのかもしれない。

決定的だったのは、NHKスペシャル。
奇跡の作曲家として佐村河内を、
手放しで称賛して取り上げて放映する。
翌日からCDの売り上げが大きく伸びたそうだ。

とてもドキュメンタリーと呼べないような番組の
制作の内幕にも触れている。


佐村河内の出身地、広島の県民性について何度も触れているが、
県民性がそれほど人柄に影響するものなのか、
すこし疑問に思った。
成り上がりの矢沢永吉を生んだ広島。
本書によると、

広島県人は、一般的に勝気でプライドが高いと言われています。
そして一攫千金を目指す野心家タイプが多いともいえる・・・


それに関連して、
広島の町の歴史や移民が多いことが紹介されているのは、
興味深かった。


騒動後、新垣さんがメディアに数々登場して活躍している姿は、
なんだか少し救われるように思うが、
佐村河内の存在がなければ、新垣さんがこれほど世に知られることもなかったと思うと、
切なくなってしまう。












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ノンフィクション | 22:38:50 | Trackback(0) | Comments(0)
STAP細胞事件とは何だったのか?   須田桃子 著 「捏造の科学者 STAP細胞事件」
「捏造の科学者 STAP細胞事件」
須田 桃子 著


STAP細胞事件とその報道の内幕を、
当時取材を担当していた新聞記者が振り返る。
日本を代表する最先端研究機関の理研、
発生・再生科学総合研究センター(CDB)の歪な体制に驚きました。






2014年の前半は次々と話題の人が登場して、
社会の関心が目まぐるしく変化したのを覚えている。

ゴーストライターの人とか、
携帯を隠して言い逃れできなくなった冤罪を訴えていた人とか。
そしてSTAP細胞を発見してとして
脚光をあびた小保方さんもその一人だった。

報道当初は、こんな若い人がすごい発見をしたなんてすごいと
単純に思ったのを記憶しているが、
それからすぐに論文の疑惑が報道され、
形勢は一気に逆転する。
当時の報道と世間の反応をまだ生々しく覚えている。

本書は、科学担当の新聞記者の著者が、
当時のSTAP細胞事件の一連の様子と報道の内幕を、
振り返ったノンフィクション。

ほぼ時系列に書かれていて、
STAP細胞発表の記者会見から、
次々と疑惑が明らかになっていき、不正が明らかになるまで、
緊迫感たっぷりに描かれている。
新聞報道の取材で得た、
記事にできなかった情報や、
当時者たちとのメールのやりとりが、
STAP細胞とその疑惑がどういうことになるのか、
不安になりながらも、
謙虚な態度で勇敢に報道する著者の姿に好感が持てる。
著者自身が理系の出身だからというのもあるかもしれない。

ただノンフィクションとして読むと、
少なからず物足りなさを感じた。
(まぁ、人によって好みは分かれると思いますが・・・)
取材に忙殺される新聞記者の日々と取材対象者とのやりとりなど、
読んでいてドキドキするのだが、
もう少し事件や日本や世界の科学界の反応や、
事件の背景の考察的な内容や、
理研の歴史や再生医学なんかの記述があってもいいかと思った。
前半から続くメールのやりとりや、
事態の進展を刻々と追う日々の様子には、
半ばあたりで少し飽きてしまう。

ただ後半、疑惑がはっきりと不正とわかる様子は、
一気に読んでしまった。

多くの男性の反応は小保方さんに優しく、
逆に女性は厳しかったように思う。
自分も結構、小保方さんいは好印象だったが、
改めて、この本を読んだ感想は、
実験結果や画像の取り扱いかたなどかなり杜撰で、
科学者としての経験が少ないとはいえ、かなり悪質な人物だと思った。
世間からの誹りは免れないレベルではないかと思った。

STAP細胞事件はいまや、
科学史において世界三大不正のひとつとされているそうだ。
結局、STAP細胞はいまのところ証明されていない。
なぜこんな不正が起きたのか。
また、経験の少ない若手の科学者のなぜこれほど持ち上げられたのか。

理研の発生・再生科学総合研究センター(CDB)の特殊な体制、
iPS細胞に対する強烈な対抗意識、
当初、科学論文を掲載する世界的な雑誌に相手にされなかったSTAP論文が、
いかにして掲載にいたったかなど、
読んでいてとても興味深かいところも多かった。

小保方さんの印象とは逆に、
共著者の山梨大学の若山先生には好印象を持った。
疑惑発覚後、いち早く論文取り下げを決断し、
その後の検証にも積極的にも関与して、
その誠実さがにじみ出ているようだった。

読み終わってもSTAP細胞事件について、
すっきりした感じはしない。
しかしながら、多くのもやもやした感じが消えていき、
不正事件が起きた理由みたいなものはわかった気がする。




















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ノンフィクション | 18:34:46 | Trackback(0) | Comments(0)
稀代の人物、笹川良一とその息子の人生。   髙山文彦著 「宿命の子 笹川一族の神話」
「宿命の子  笹川一族の神話」
髙山文彦 著

モーターボートレースを主催し、政界財界に多くの影響力をもった
笹川良一とその三男、陽平の人生を中心に戦後の笹川一族を追ったノンフィクション。
笹川良一という稀代の人物の実像に驚きました。



笹川良一。

子供のころ、多くの子供を率いてCMに出ていた姿が印象に残っている。
「人類みな兄弟」
そういうキャッチフレーズが思い出される。

世の中ではあまり良い噂を聞かなかった。
しかし、その実態はあまりにかけ離れていて驚く。
日本はもちろん、世界の平和や人類の共栄を本気で願っていたんだと、
感激してしまう。

困っている他人には、救いの手を多く差し伸べているのだが、
身内、特に3人の息子にはとても冷たい。

笹川良一については、本書の前に「悪名の棺 笹川良一伝」
を読んでいたのでその豪快な生き方と、
人類の平和を本気で考えていたこと。
そして息子たちに冷たかったことなどはほぼ知っていた。

本書は良一の三男の陽平氏の人生を通して、
笹川一族を描いているので、
家族の視点からみる良一の一面が詳しく書かれている。


株などの投資で若くして財をなす良一。
困っている人や頼ってくる人は放っておけない性分で、
お金を渡したり、仕事を世話したり、
とてもまねできない。

国や世界の平和や共存共栄を考え、
戦前、政党を組織して、
国会議員を努めている。

終戦では、自ら戦犯になることを望み、
希望通り戦犯として巣鴨プリズンに収監される際には、
支援者たちに万歳で送り出される。

巣鴨プリズン内では、
敗戦の責任と処罰の不安から、
戦争を指揮した責任者の誰もが打ちひしがれているが、
良一は一人元気に過ごし、
進んで掃除などの労働をこなす。
そして落ち込んでいる人間を励まして回る。

また、大東亜戦争を起こして日本の立場を正面から主張して、
GHQ宛てに文章を出したりしている。

なんとも豪快で、常に活力にあふれている良一の姿は、
読んでいるだけで、こちらも元気が出てくるようだった。

死も恐れずに自分の考えを主張する良一の自信は一体どこからくるのか。
その理由のひとつが、かなりの巨根だったということではないかと思った。
本文中にもそのエピソードが出てくる。
(半分冗談ですが・・・。息子も認めるほど立派だったそうだ)

そのほか、戦後のモーターボートレースを始めたことや、
その収益の一部を社会貢献に使うようにしたことなど、
硬軟、さまざまな逸話が語られて、読んでいて飽きなかった。

そして、良一の三男の陽平。
まったくの他人には世話を焼くのに、
実の息子たちにはまったくと言っていいほど
愛情を注いでいない。

そのため、3人の息子たちは成人するまで、
良一と親子らしいかかわりを持たずに育つ。
大学進学のために、東京の良一の家に住むことになる陽平は、
息子というより、下男として移り住む。
掃除や洗濯、風呂の準備など、
学業以外はほぼ家の仕事をしている。
付き合いの多い良一なので、
毎晩のように客が訪れ、
何人かは家に泊まって行ったりするので、
世話も大変だったようだ。

笹川良一のビッグネームの七光りで、
政界や財界でのし上がって行ったんだろうと勝手に想像していたので、
本当に驚いた。
苦労を知らない2代目というわけではなかった。
むしろ苦労しまくり、苦労押し付けられまくりだった。

息子にこれほど厳しい父ながら、
陽平は良一を尊敬していたというからすごい。
やはり、父が私利私欲をすてて、本気で日本や世界を良くしようと
日夜奮闘していたのが分かったのだろう。

紆余曲折を経て、日本財団の理事長になる陽平だが、
社会貢献の分野で世界を飛び回り、
いろいろな活動をしていて本当に頭が下がる。

あらゆる集団と距離をおき、孤高の姿勢を崩さずに、
信念をもって自らを貫きとおす。

日本財団の理事長の人事などでは、
官僚や政治家が盛んに介入してきたり、
財団内部の不祥事でマスコミにたたかれたり、
当局に捜査されたりしたが、
自分や財団には一部のやましさもないと堂々としていた。
さすが良一の息子という感じでしびれてしまう。

人間なのだから何かしら弱みがあるとはおもうのだが、
自分を律して生きているだけあって自信も相当なものなのだろう。


陽平の功績としてハンセン病の克服の様子が描かれている。
聖書にも書かれているというこの病は、
その病状の性質状、どうしても差別される運命にあった。
しかし、陽平は日本財団をとおしてハンセン病の特効薬を世界中に配布して、
全世界からこの病を根絶させることにほぼ成功している。
また元患者などが不当に隔離や差別されている現状を訴え、
差別をなくす活動を世界で展開している。
あまり報道されていないが、
もっと日本では扱われていいのではないかと思った。
これほどのまったくの真心からの援助で、
しかもこれほど成功しているものはそうはないのではないかと思う。
良一とは対照的に陽平はあまりメディアには出たがらないのかもしれないが。

北朝鮮の日本人妻の一時帰国での陽平の活躍についてや、
沈没船の引き上げにかかわる詐欺など、
昭和の近現代史の裏面についても書かれていて、
歴史を切り口として読んでも面白いと思う。
(著者の語りが結構横道にそれるが、それはそれで面白かった)

豪快で活力にあふれ、本気で世界平和や共存共栄を願っていた良一。

マスコミや世間に誤解されていた父の汚名をそそぐことが
使命だとする陽平氏の姿。

何にもなびかずに孤独を恐れない陽平氏の姿。

この親子の前では、戦後のどの政治家も小物に見えてしまう。


できればじっくりを腰を据えて
もっといろいろと陽平氏の話を聞いてみたいと思ってしまった。

大著だけあって、ここに書ききれないほど、
いろんなエピソードがでてくるので、
読後は本当におなかいっぱいって感じでした。












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