投稿日:2007-05-12 Sat
ついこの間読んだ「制服捜査」なかなか良い駐在さんの小説だったなぁ・・・と感慨に浸ったいたら、道警シリーズの新作が出たということで早速読んでみました。
佐々木譲著
「警察庁から来た男」
の感想です。
![]() | 警察庁から来た男 佐々木 譲 (2006/12) 角川春樹事務所 この商品の詳細を見る |
未読なんですが、「うたう警官」の続編的な作品だと思います。
道警の裏金疑惑を内部告発し、今は、警察学校の総務係営繕担当に左遷された津久井が主人公。
警察庁長官官房監察官室、藤川。
彼は、道警の人権を無視した職務怠慢や怪しい転落死亡事故を事件性なしと、捜査しなかった事が、海外メディアに道警と裏世界との癒着と報道されたことで、内部を監察に道警に乗り込んでくる。
藤川は、内部監査の協力を津久井に要請する。
仲間を売ったとして、津久井は多くの警官からは白い目で見られていた。しかし、津久井に賛同する仲間も少なからずいた。
津久井は道警のため、真面目に働いている警官達のためと、藤川からの要請を受ける。
職務怠慢と転落事故。
二つの事件には何か共通する事があるのか。
裏の社会と関連しているのか。
担当している人間はまったくの別の警官と捜査官。
資料から見ても、職務や私生活に問題のある警察官達ではない。
藤川と津久井。そしてそのほかの協力者達。
彼らは、組織を守ろうとする道警の中で、癒着の事実を突き止められるのだろうか。
癒着しているとすれば組織的なものしか考えられない。
とすれば、その組織とは・・・。
ストーリーとしはこんな感じ・・・。
前半、人物がいろいろでてきて、場面もいろいろ出てきて、物語に入るまでちょっと時間がかかるかも・・。
でも、一度、内部監査の話が始まると面白いよー。
どんどん引き込まれた。
どうも警察内部に、情報を裏の社会に流す人物がいるとわかってから、えさを撒いて罠をかけたり、資料をあたって癒着している組織の存在を突き止めたり・・・。
興奮したよ。
ところどころに読者をひきつける伏線もありつつ、物語は最後まで息をつかせぬ感じで進むよ。
おそらくは現実に似たようなことがあったのかも・・。
警察内部が、まるで津久井たちと一緒に行動しているかのように臨場感たっぷりで描かれている。
キャリアとノンキャリア。
定年後の再就職。
裏金。
階級。
いろいろな警察の事情も盛り込みながら、ラストは、津久井と藤川が真相へと迫るのだ。
ベテラン作家だけあってうまいですよ。飽きさせない。
ホント、ぐいぐいラストに向けて引っ張っていく。
正義と悪。
どこで分けるか、ホントに微妙だと思う。
職務怠慢はいけないけど、ちょっとぐらいなら癒着は良いんじゃないの。お互いもちつもたれつってことで・・・。
だから、津久井から追及される側になんか同情しました。
彼らにもいろんな事情があるんじゃないの、そんなカタイこと言わないでって・・・。
でも、度が過ぎるのはまずいけど。
公務員である警察官がベンツに乗っていたり、高級マンションにすんでいたり。
実際の北海道警察がどうなのか、今度はノンフィクションを読んでみたくなりました。
特に、この本に何度も出てくる「郡司事件」について・・。
どれだけ道警は腐敗していたのかな。
でも、真面目に法と秩序の番人をしている人がほとんどだと思う。
あまり、嫌なお巡りさんに会ったことないし・・。
警察の内部を垣間見られる一冊です。
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投稿日:2007-03-17 Sat
久しぶりの宮部みゆき。「誰か」以来のめぐり合わせ。
これは、おそらく「誰か」の続編でしょうね。
この、逆玉の輿の設定は読んだ記憶がある。うん、たしか。
ということで、宮部みゆき著
「名もなき毒」
の感想です。
![]() | 名もなき毒 宮部 みゆき (2006/08) 幻冬舎 この商品の詳細を見る |
読後の最初の感想は、「長い!」ってこと。
とにかく長い。
新聞連載だからなのか、話がほんとにゆっくりと進む。
まぁ、じっくりといろんなことを書き込んで、宮部ワールドが好きな人にはこたえられないだろうけど。
大概、俺も宮部ファンだと思ってたけど、ちょっとこの長さ、長さを感じさせる内容には、疲れましたよ。
大企業体の今多コンツェルンの総帥、今多嘉親。
主人公の杉村二郎はこの嘉親と愛人の娘、菜穂子と結婚。
出版社をやめて、現在は今多グループの広報誌編集部に勤務している。
逆玉ってやつだね。
この、うらやましい杉村二郎が、事件や問題を解決するって話。
決して、頭脳明晰でスパスパ難問を解決するっていうような爽快さはなく、普通に生活して考えて、ちょっと二郎が動くと真相がわかるってかんじ。
全体的に、優しい。優しいよ。
まぁ、いい意味で宮部ワールド炸裂っていう印象ですね。
この主人公がまた、いい人なのよ。
怒らないし、穏やかで、著者本人をあらわしているような人柄。
「宥める」って言葉が何度も出てくる。
いつも宥めてばっかりジャン。この男。
それだけ、いつも冷静なんだね。
そして、暇。
社内報の編集はもちろんしているんだけど、まったく関係ない相談事を引き受けたりして、どんだけ暇なんだよ。
この格差社会からは羨ましい身分だよ。
現代の世相を結構取り込んでいて、いろいろ出てきますよ。
リフォーム
いじめ
老人介護
ワーキングプア
シックハウス症候群
土壌汚染
などなど・・・。
庶民を描くのがうまい著者。
今回も、普通に暮らす庶民を描くのだが、主人公は違う。
何せ、巨大企業体の総帥の娘婿だから、杉村家は、庶民とはちょっと違って、所々にセレブ感が漂う。
例えば、
家政婦が登場したり、年末の大掃除は業者に頼んだり。
世間を騒がせる無差別殺人と、編集部をクビになった女が引き起こす問題を交互に描いて引っ張っていくのだが・・。
それでも、長いよ。
ラストは、この両方の問題が一気に解決って感じだけど、もっと短くてもよかった。
新聞連載だから仕方ないかも知れないけど・・・・。
唯一良かったのは、編集部をクビになった女のイカレっぷり。
嘘はつくわ、傲慢だわ、最悪。
不思議なのはこんな女が競争を勝ち抜いて、編集部に採用されたこと。
ちょっと矛盾しているよ。
いくらなんでも気づくでしょ。こんなにいやな女なら・・・。
宮部ファンがじっくり宮部ワールドに浸るにはうってつけ。
誰もが持つ、名もなき毒。
現代社会の生きにくさ。辛さ。理不尽さ。
そんなことを考えさせる一冊です。
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投稿日:2007-01-29 Mon
直木賞作家の東野圭吾。著者の作品を読むのは、受賞作の「容疑者Xの献身」
以来・・・。
安定した筆力の著者ですから、楽しませてもらおうと舌なめずりをしながら読みました。
東野圭吾著
「赤い指」
の感想です。
| 赤い指 東野 圭吾 (2006/07/25) 講談社 この商品の詳細を見る |
タイトル「赤い指」
なんか謎めいていて、なんともそそるじゃないですか。
早く物語りの世界にのめり込みたい・・・そう思わせるね。
しかし、内容は何とも暗いよ・・・。
認知症、いじめ、親子のコミュニケーション不足、熟年夫婦の不仲、嫁姑問題。
それら、現代の日本の家庭が抱える問題をほぼ網羅。
だってさぁ、サラリーマンの昭夫が家に帰ると、見知らぬ女の子の死体が庭に転がっていて、中学生の息子が殺したと言うんだよ。
勘弁してくれよって誰もが思うでしょ。
もう、何やってんだよ。
警察に届けるって昭夫は言うんだけど、女房の政恵が息子を犯罪者にはしたくないと猛然と反対する。
息子は父親の昭夫とは、ほとんど口を利かなくなって、母親にしか心を開かなくなっている。学校では、いじめに会っているようだと政恵に聞かされる。
お前が甘やかして育てたからだと政恵を責めるが、父親らしいことを何もしてこなかったでしょと逆にキレられる。
悩んだ末、昭夫は少女の死体を近くの公園にすて、息子の犯罪を隠そうとするのだが・・・・。
犯罪を起こした側だけでなく、捜査する刑事のほうにもきちんとドラマが用意されていて、飽きさせないよ。
やはり、読みどころは犯罪を隠そうとする昭夫の行動と心理。
公園まで死体を運んで捨てるまでのところは、興奮するね。
誰かに見られてないか、ハラハラしたもん。
俺も読みながら死体、運んでたよ。
プラス、なんでおれがこんな事しなくちゃならないんだよ。
あんな馬鹿息子のために・・って心理が良くわかる。
物語は結末に向かって進むが、もう一ひねりあり、ラストは優秀な刑事の仕掛けたドラマがある。
そして、じんわりと胸が熱くなる感動の場面がまっている。
暗い出来事ばかりの世の中で、それでもしっかりと誰かのことを思って、支えあえばちょっとはいい世の中になるんじゃないか、とかすかに差し込む希望の光を見せて終わる。
食べること、住むこと、着ること・・。それらに満ち足りている現代の日本。
でも、幸せって何かね・・・と問われているように感じたよ。
んんん・・・・。
誰もが感じるこの不安感、焦燥。
貧しい国のひとたちからみると、贅沢な悩みだと思うけど。
文章も読み安いし、ボリュームもちょうどいいし、上質エンタテイメントを堪能したっていう満足感でいっぱいになりました。
家族と親の愛情の深さに感動させられる一冊です。
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投稿日:2007-01-17 Wed
「このミステリーがすごい」って知ってる?年末に、その年に発売された娯楽系の小説を読書通が投票して、1位から10位の(それ以下も・・)ランキングを決めるというもの。
毎年年末になると、「このミステリーがすごい」を買って、国内、海外の両方の1位の作品を読むことにしている。
今年の1位は
国内が
平山夢明著
「独白するユニバーサル横メルカトル」
海外が
ローリー・リン・ドラモンド著
「あなたに不利な証拠として」
国内の1位は未読ですが、(近いうちに読む予定です)海外の1位作品は、このブログですでに感想を書いていますので、ぜひ、参考にしてください。(そのブログはこちら)
今日の作品は、最新版 「このミステリーがすごい ’07」で、国内の小説ランキングで堂々の2位にランクイン。
この著者の作品はまったく初めてで、少し緊張しながら読み始めました。
佐々木譲著
「制服捜査」
の感想です。
![]() | 制服捜査 佐々木 譲 (2006/03/23) 新潮社 この商品の詳細を見る |
北海道警察は身内の警官の不祥事が発覚し、その再発防止策として、警官や刑事がひとつの職場に長くいることを一切禁止し、有無を言わさずに転勤させる方針を打ち出す。
その結果、長年刑事として捜査をしていた人間が、運転免許の更新事務をするという、何ともバランスを欠いた人事になってしまう。
この本の主人公の川久保も、長年、刑事課の捜査員として実績をつんで来たが、突如、人口6000人の町の志茂別駐在所勤務を命じられる。
何よりも、この“駐在さん”という微妙な存在を主人公にした警察小説っていうのが、良かった。
警察署勤務の警官や刑事とは、かなり、仕事の内容が違うんだよなぁ・・。
駐在だから、そこに住み込んで仕事するって事。
だから、地元住民や消防団やいろいろな団体とうまく付き合い、良好な関係を築かなければならない。
時には、違法なことにも目を瞑らなければならない。
ほんと駐在さんって独特な仕事だよなぁ・・・。
でも、地元密着して長年一箇所に勤務した駐在さんが都内にいて、そこでは犯罪発生率が低いらしいから、いいことだとは思うけど。
主人公、川久保巡査長。
札幌に、妻と二人の娘を残しての単身赴任。
理不尽な移動だが、元刑事課捜査員は駐在の職務でもその能力をいかんなく発揮する。
北海道の独特の雰囲気・・・牧場、閑散とした廃線後の駅、往来の少ない道路・・をうまく描きながら事件綴っている。
北の人のどこかさめている感じも伝わり、独特の空気や温度、雰囲気が漂う。
事件としては華々しい事は起きないが、発生から本署への連絡や地元住民への聞き込みと、実際の駐在の動きを見ているかのようだ。
事件とその後の事の成り行きも、実際の事件を見ているようで鮮やかな解決とはいかない。
読者には、何となく犯人をにおわせるが、証拠や証言が引き出せずに結末に近づくのだが、ラストで、しっかりとオチをつけて、もやもやしていた心をはらしてくれる。
中編が5編収められているが、冒頭の「逸脱」は何とも切ない。
赴任してきたばかりの川久保は町の雰囲気なんかをまだ飲み込めていないから、ぎこちない捜査となる。
発端は高校生の息子が帰って来ないと、母親から通報だった。
交友関係なんかをあたる川久保だったが、これといった手がかりは得られない。
何となく、あやしいと特定の人物にめぼしはつけるのだが・・・。
数日後、農道の脇で行方不明の高校生が遺体となって見つかる。
盗難届けが出されていたバイクとともに・・・。
本署からきた素人同然の経験の浅い捜査員は、単純に交通事故として処理する。
盗んだバイクで、スピードを出しすぎたのだろうと・・。
様々な状況から、ただの交通事故ではない、これは事件だと川久保が訴えても取り合おうとせず、職務からの逸脱だといわれる。
それでも、長年の経験と知識から川久保は納得しようとせずに・・・。
狭い町、ほとんどの人が顔見知り、権力者の理不尽な力がまかり通る。
ほんと切ないね。
読んでいて、ピンときたんだけど、この小説の元になった事件があって、それは未解決のまま、事件性なしって事で処理されている。
著者は、事件性なしという警察のくだした判断に余程の憤りを覚えたのだろう。だから、その小説を書こうと思ったのかも・・。
うん、わかるよ。その気持ち。
ちなみに、著者のプロフィールを見ると、北海道生まれ。
人より思い入れを強く、実際の道警の不祥事や怪事件の行方をニュースなんかで見守っていたんだろうな。
(著者が元にしたであろう、実際の事件は、木村悟君の疑惑の死事件です。詳しくは、以下のサイトを参照してください。
木村事件
不起訴不当の議決を求める署名
柳原三佳blog
木村君の遺族は今でも、息子さんの死に疑問をもって活動しています)
そのほか、町にいる住民の人間関係や力関係、思惑なんかに翻弄されて発生した事件はすっきり解決しない。
そこがまた、現実的で切ない。
駐在さんの苦労を痛感する一冊です。
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