投稿日:2006-05-20 Sat
「ある秘密」 タイトルからそう言われちゃっちゃ、どんな秘密だよと読みはじめるのが人の常。
![]() | ある秘密 (新潮クレスト・ブックス) フィリップ グランベール (2005/11) 新潮社 この商品の詳細を見る |
かく言う私もどんな秘密があるのやらと舌なめずりをしながら読みはじめたのでございます。
「ひとりっ子なのに、ぼくには長いあいだ兄さんがいた」
なんとも興味を引かれるこの冒頭の一文から物語にすんなり引き込まれましたよ。(ふざけるのは、ここまで。実際、読み始めるときはこんな気持ちでしたよ)
秘密とは大体において過去のことだろう。
ヨーロッパで、隠しておきたい過去のことといったらだいたいは予想がつく。まぁ、実際、忌まわしい人道的な組織犯罪のことなのだが、著者はその辺のことを、慎重に、におわせる程度で書いていく。
両親の出会い、兄の存在、そして、戦争。
父と母が隠してきた事実と、15歳になったフィリップは出会います。
なんとも悲しい出来事。やがて、両親が後ろめたさを感じていたわけを知ります。
あの戦争やあの独裁者がやったことがどれだけの人間を苦しめ、家族の絆を壊し、心を傷つけたか・・・。
この本は、著者の自伝的小説で、過去の出来事に苦しむ父の姿を見て、著者は人の心の苦しみを取り除き、癒しを与える精神分析医になっています。
肉親が、あの戦争の犠牲者だと知ったときの衝撃はどれほどのものだっただろうか。
あの戦争は、まだ終わっていない。
まったくかかわりがない私でも、あれは、本当に起きたことなんだと改めて実感させられた。
愛情、欲望、背徳。
静かな文章で強く、深く訴えかけます。
ぜひ、女性に読んでいただきたい一冊です。
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