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タウム1

Author:タウム1
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「自分の感性くらい 自分で守れ ばかものよ」 茨木のり子

この言葉を肝に銘じて、本や映画を鑑賞しています。
やっぱり読書はいいですね。
いつも何かしらの本を読んでいます。
ミステリーから純文学まで・・。
特にノンフィクションはやめられないですね。
知らなかったことがわかる快感、魂の解放って感じで・・・。

オススメ本・・・「おそめ」 伝説のホステスの生涯。何ともいえない思いになりますよ。 「わたしを離さないで」 この気高く、奥深い感じ。小説の魅力に満ち溢れてます。 オススメ映画・・「イン・ザ・ベッドルーム」 二人の女優の演技にホレボレします。  「ザ・コンテンダー」 信念を貫くとはこういうこと。強いメッセージを感じますよ。

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日本中を震撼させた、川崎中一殺害事件のノンフィクション。  石井光太 著 「43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層」
「43回の殺意 川崎中1男子生徒殺害事件の深層」
石井 光太 著


当時、日本中を震撼させた少年殺害事件のノンフィクション。
さまざまな角度から事件を見つめなおしていて、
著者の筆力が存分に発揮された力作。必読です。







不謹慎を承知で言わせてもらえれば、事件もののノンフィクションが大好物です。
今の日本の闇や暗部が、事件に如実に表れていると思うから。
新聞やテレビのセンセーショナルな報道だけでは見えない、
事件の裏側や犯人の人間像・家庭環境なんかがより深くわかる。

本書はウェブマガジンの連載中から時々読んでいて、
書籍化されるのを待っていました。
悲惨な事件を単純に正義感で描くのではなく、
冷静な視点で、さまざまな角度から事件を描いています。

事件は川崎の多摩川の川岸で、
全裸の中学1年の少年の遺体が発見されたことから端を発する。
後日、逮捕されたのは地元の10代後半の少年3人。
被害少年の体には、43か所の刃物で切り付けられた傷があったことから、
その凄惨さに一斉に報道され、日本中の話題となった。
そして、報道されると同時に、
事件現場となった多摩川には多くの人が、
被害少年の慰霊のため、
花や食べ物を供えに訪れ、
その様子も何度も報道され話題となった。

まずは被害少年の父親の視点での記述が続く。
母親には取材できなかったことが理由だが、
事件までの少年の人生がよく描かれている。

離婚して、息子とは別に離島に暮らしていた父親が、
警察の捜査に協力するために川崎に来るが、
捜査の進展を一切知らされず、
息子のために何もできない事件直後の様子は、
被害者の家族の気持ちが伝わってくる。

そして、加害者の少年の家庭環境もそれぞれ描かれる。
3人の内、2人の母親がフィリピン出身ということで、
それも当時いろいろと話題になったらしい。
殊更、その点を強調すべきではないが、
事実を伏せるのもよくないと思う。

加害者の少年たちに共通していたのは、
家や学校に居場所を見いだせず、非行を繰り返したこと。
ゲームやアニメに熱中し、同じような境遇の仲間と
遊ぶ金欲しさに賽銭泥棒や万引きをする。

特に一人の少年の母親は、
日本語が覚束ない程度で、
親子ではきちんとコミュニケーションができていなかったそうだ。
また、日本語ができないことから、
日本の社会とか教育とか制度を理解できないので、
息子の先生や学校とのやりとりもしていなかったようだ。

たくさんの花であふれた事件現場の多摩川で、
枯れた花を処分し、掃除するボランティアの人たちが現れる。
また、遠くからわざわざ花を供えにくる人たちも大勢いた。
かつていじめられていた人や子供がいじめにあっている人など、
この事件がきっかけとなってつながり始めて人々も描かれれる。

読み進むうちに事件の悲惨さに心が重くなる。
そして、被害少年を何とかして救う方法があったのではないかと考えてしまう。
父親が言うように、少年は運が悪かったのかもしれない。
今の日本の社会のひずみやシワ寄せが少年の命を奪ったのかもしれない。

主犯の少年は、たびたび非行を犯していて、
警察につかまっている。
それでも、少年院や施設には入れられず、
社会での更生が許されている。
もし、しっかり施設で更生させていれば、
被害少年は生きていたかもしれない。

裁判を通じて、
行政の失敗や怠慢が
事件の原因の一つであるとまったく触れられなかったことを
著者は強調する。

もし、外国人の親を持つ子供やその家庭に、
行政の救いの手が差し出されていれば、
加害者の少年の運命は違っていたかもしれない。

日本語が覚束ない母親は、事件後、
アメリカ人の恋人とアメリカに渡ったそうだ。

現在の川崎はどうかわからないが、
当時の川崎という町は、
学校や家に居場所がない少年たちには、
非行に走りやすい環境だったのかもしれない。
主犯格の少年は、酒に酔うと狂暴になるようで、
犯行時も酒に酔っている。
コンビニで普通に酒が買え、
居酒屋では少年グループで何度も飲酒している。

被害少年や加害少年に、
もう少し違う居場所があれば・・・。
違う道を示してくれる人がいれば・・・。
事件は起きなかったかもしれない。

そう思わずにはいられなかった。

事件後、川崎は日本はどう変わったのか。
まったく変わってないのか。

今の日本を生きるうえで、必読の一冊だと思う。





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テーマ:ノンフィクション - ジャンル:本・雑誌

ノンフィクション | 13:39:47 | Trackback(0) | Comments(0)
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