投稿日:2007-08-22 Wed
ノンフィクション好きとして、何となくタイトルに惹かれて読み始めた本です。
おそらくは、偉大な教師だろうと想像がつくのですがどんな教
師だったのかと期待しましたよ。
植村鞆音著
「歴史の教師 植村清二」
の感想です。
![]() | 歴史の教師植村清二 植村 鞆音 (2007/02) 中央公論新社 この商品の詳細を見る |
本書の主人公、植村清二はあの直木三十五の実弟で歴史学者。
本が書かれれるくらいだからよほどの業績や、ドラマティックな人生を送ったのだろうと想像したのだが・・・。
意外にも、それ程でもなかったです。
本としても決してつまらなくないし、優秀な教師で研究者だというのはわかったんですが・・・。
植村清二は、東京帝大を卒業後、松山高校、新潟高校で東洋史を教え、そのご新潟大学、国士舘大学で教授をつとめた。
一人の人間の立身出世ぶり、大学を卒業して教師として地方の学校に赴任して、結婚をして家庭を築いていくという人生を、ずーっと通して読めるんで、すごく興味深かった。
ただ、普通の人というと語弊があるが、一冊の評伝として読むのにはちょっときついものがある。
ひたむきに歴史を研究し、教え子達に熱心にその成果を授業する。
立派な教師であり、研究者であり、同時に家族思いの父であり、夫であった清二。
素晴らしいひとだけにちょっとこちらが引いてしまうし、やはり、物足りなさを感じた。
この本の存在は著者の正体にある。
実は著者は清二の実の息子。
一番近くで、この歴史学者の戦後の奮闘ぶりをみていたのだ。
第一部は、第三者的な視点の記述で、生い立ちから教師になるまでを綴っているのだが、第二部になるといきなり「私は、そのとき三歳だった・・・」と当事者の文章になる。
この本は、一人の歴史学者の評伝として読むのではなくて、植村家の戦前から戦後にかけての家族の物語として読めば面白く読めると思う。
早くに妻を亡くしてあと、子供3人と義理の母と暮らした清二。
仕事と家庭の役割におわれて、たいそう苦労したことだろう。
つまりこの本は、父に対してなにもしてやれなかったことへの罪滅ぼしであり、親孝行なのだ。
清二の教え子には、著名人もいる。
丸谷才一、野坂昭如、利根川裕・・・。
教え子のほとんどが口をそろえて、清二の授業がいかに素晴らしく、歴史を物語のように語り、わかりやすかったかを言っている。
そして、その反骨精神も尊敬される理由だろう。
戦前は、軍国主義に反対し、戦後は、マルクス主義に反対した。
保身を考えればとてもできないことだと思う。
ただ、ちょっと一言いわせていただけば、ちょっと持ち上げすぎ。
生徒達が清二を絶賛した文章をこれでもかと引用しているんだなぁ。
もう、素晴らしいのはわかったよ・・・と後半は辟易。
それでも全体的にみれば、戦後史や昭和史として読み応えがあると思いました。
熱心な教師であり、優秀な研究者である歴史学者の人生に感動する一冊で。
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