投稿日:2018-01-29 Mon
鬼才SF作家の傑作短編集。どの作品も読後、余韻に浸りたくなるようなものばかりでした。
長編と違って短編は、あれやこれや長々と書けない(書かない)。
それだけに、物語をどう語るか。
語り手や登場人物の人生の一部をどう切り取るかが、
作家の腕の見せ所。
鬼才と呼ばれるだけあって、
その点、どの作品も一気に惹きこまれる。
冒頭の作品、「ごきげん目盛り」は、
AIやロボットがもうすぐ人間の能力を追い越すと言われ始めた今、
タイムリーさを感じながら読んだ。
アンドロイドの稼ぎを頼りに生きる男と罪を犯すアンドロイドの逃避行。
完璧なはずのアンドロイドの意外なもろさに背筋が凍るような怖さを感じた。
「昔を今になすよしもがな」
地球に最後に残され、偶然出会った男女のやり取りが描かれる。
一人での生活は自由気ままで、やりたいことをし放題だが、
誰かの手を借りたいこともある。
結構身近で、切実な問題があることを改めて実感。
出会って変化していく人間関係の微妙なバランスに、
ハラハラしてしまった。
「選り好みなし」
原爆後の世界で、なぜか人口が増加していることを、
統計データで発見した男。
真実を探ろうと調べると意外な事実がわかる。
日本人も登場して、とても印象的な作品。
昔はもっといい時代だった・・。
未来はもっと快適な世の中になっているはず・・・。
そんな妄想が空しくなってしまう。
人によって、琴線にふれる作品は違ってくると思う。
SFを読むといつも思うこと。
通常の読書ではなかなかない刺激を受けること。
今回もさまざまな角度からの刺激をうけることができた。
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