投稿日:2017-07-24 Mon
「日本を飛び出して世界で見つけた僕らが本当にやりたかったこと」森 美知典 著
海外で成功した20人の日本人。
それぞれの考え方や生き方に刺激を受ける一冊です。
海外で活躍する20人の日本人に話を聞いて、一冊にまとめた本。
冒頭、インディー500で優勝して、
ニュースにもなった佐藤琢磨さんのインタビューが載っていて、
とてもタイムリーで興味深かった。
20人の中では一番、刺激を受ける人でもあった。
高校時代、自転車競技に打ち込んでいた佐藤さん。
通っていた高校に自転車部がないので、先生に頼んで、
部員は自分だけという、自転車部をつくり、
大会に出場できるようにする。
そして、強豪校の自転車部の先生に連絡し、
強化合宿に参加させてもらえるように掛け合って、
さらに強くなろうと努力している。
そしてF1の学校に入学するときも、
戦略を練って、高い倍率の難関を突破して入学する。
何事にも積極的で、戦略を練って目標を達成していく姿勢。
夢をかなえる人は頭の中も違っているんだなぁと感心した。
20人に共通することは、
考えを実行にうつしていること。
海外で働きたいと思う人は結構いると思うが、
実際にやっている人は少ない。
そして、成功している人はもっと少ないだろう。
一歩踏み出す勇気、成功のため戦略と努力。
どの人も、現在の成功までは簡単ではなかったようだ。
そういう意味で、忍耐力も必要だ。
20人の人生はそれぞれとても興味深く、参考になる。
それぞれのこれまでの人生がコンパクトにまとまっているが、
少し物足りない感じもした。
もう少し、一人一人の人生を掘り下げてほしかった。
中には離婚している人もいて、
なぜ離婚したのかを知りたくなった。
単なる興味本位ではなく、海外での生活が夫婦生活にどう影響したのか、
それぞれの考えの向かう先が違ってしまったからなのか。
登場するのは30代、40代の人がほとんど。
働き盛りの人たちの特集だから当然だが、
自慢話ばかりを集めているという印象も抱いた。
海外で生活しているもっと上の年代の人とか、
海外で生活していて、日本に戻った人や、
失敗を経験した人についても知りたくなった。
海外での生活を夢見ながら、
まずは日本での生活や仕事を充実させようと思った。
投稿日:2017-07-16 Sun
「京都ぎらい」井上 章一 著
日本文化研究者による京都論。
確立されたゆるぎない京都(洛中)の価値や地位を批判していて、
京都の中のヒエラルキーの存在に驚きまた。
著者は京都府生まれの日本文化や建築の専門家。
京都生まれと言っても、洛外といわれる嵯峨の生まれだそうだ。
まったく違う地方の生まれの人間からすると、
それほどの違いは感じず、
むしろ京都生まれということに少し憧れを感じる。
ところが、京都生まれというと、
京都市の中心部(洛中)の人から
異論が出るそうだ。
つまり、洛中からはずれていれば、京都にあらずということらしい。
歴史ある京都は、一見さんおことわりとか、
独特の文化を持っているとは想像していたが、
これほどエリート意識というか、自負の考えが強かったのかと
改めて驚かされる。
それは縁談においてもそうで、
洛外の人は相手にもされないようだ。
京都市の東、山科(洛外)の人の縁談があった女性の一言は、
驚くと同時にちょっと納得してしまった。
「・・・山科なんかいったら、東山が西のほうに見えてしまうやないの」
嵯峨とか宇治とか山科とか、
教科書なんかで目にした地名を
出身地といえるなんて、
ちょっとうらやましいと思うが、
京都の中ではそうではないらしい。
冒頭から前半は、著者の体験したり、見聞きした、
この洛中の人たちの洛外の人たちに対する差別を、
書き連ねている。
さすがにちょっと飽きてきたなと思ったところで、
京都の歴史や薀蓄が語られていく。
堅苦しくない読み物で、歴史や京都を知ることができるので、
とても面白く読んだ。
芸者が当初は男のことを言っていたとか、
寺が宿泊所を兼ねていたとか・・・。
特に面白いのは、鎮魂の寺についてのところ。
南北朝の争いで敗れた後醍醐天皇の魂を鎮めるために、
足利尊氏は天龍寺という寺を建立している。
そしてその事実が、梅原猛の法隆寺論につながる。
これは権力闘争にかった藤原氏が、
聖徳太子一族の鎮魂のために法隆寺を建立したというもの。
恥ずかしながら、初めてきいた話だったので、
とても興味深かった。
勝負に負けたものは、恨みを募らせ、
怨霊となっていろいろと世の中を混乱させる・・と
当時の人は考えたのかもしれない。
そのあたりを想像すると、
当時の日本人が精神や考え方が垣間見えるようで、
面白かった。
冒頭の洛外出身者の嫌な体験の話は、
ラストでうまくつながっていくのは、
さすがに数々の著作をあらわしているだけあるなと感心してしまった。
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