投稿日:2017-06-29 Thu
「図解でわかる ホモ・サピエンスの秘密」人類誕生から現代までをサクっとおさらい。
こうして振り返ると人類の歴史に違った感想が沸き起こる。
古代の人類誕生から現代の人間社会まで、
サクっと振り返って、現代の人間が抱える問題について考えている。
まず「図解でわかる」とあるが、
文章が平易でわかりやすかった。
冒頭の人類の誕生からとても面白くて、
どんどん読めて、時間が経つのを忘れて読みふけってしまった。
個人的に興味深かったのはやはり人類の誕生から進化のところ。
ある程度は知っているとは思ったが、
改めて人類の進化を知るとへぇーと感心してしまった。
人類の祖先のホモ・サピエンス。
そして同時代を生きたネアンデルタール人。
ネアンデルタール人は絶滅してしまうのだが、
その原因が脳の構造にあったのではないかというのは、
まったくの初耳で驚いた。
生き残るホモ・サピエンスとネアンデルタール人の脳の構造が、
まったく違っていたというのはとても興味深い。
また、農業の発達の理由を一つの仮説で解説しているのも興味深かった。
それは、宗教の発達が深くかかわったのではなかったかというもの。
それから、アンコールワットの文明が滅亡したのは、
蚊が媒介した伝染病が蔓延したのが原因だったのではないかとか、
最新の研究を紹介しているのも興味深い。
近代・現代のところは真新しいことはあまりなかったが、
通して読んでみると、やっぱり面白い。
特に今や世界の先進国が集中しているヨーロッパが、
以前は文化や経済では中心から遠く離れた僻地だったという事実。
それもわかりやすい図で解説している。
ここまで文明が発達した人類。
でも日本では幸福を感じる人は少ない。
それは西洋式の生活様式を取り入れて、
本来の日本人らしい生き方を捨てたからではないか。
たどりついた一つの結論に納得してしまった。
投稿日:2017-06-15 Thu
「夜を乗り越える」又吉 直樹 著
お笑い芸人にして、芥川賞作家の又吉さんによる、本が読みたくなる読書論。
著者は言わずと知れた、ベストセラー作家の又吉直樹。
本について書かれた内容だとは知っていましたが、
想像以上の内容で、とても面白かったです。
前半は著者の幼少期からの読書歴がつづられます。
冒頭、父親の実家の沖縄で親戚の前で慣れない踊りを見せたら、
大うけしたことで、父親から「調子のるなよ」と言われるエピソードが
披露されている。
個人的に、いきなりこんなえぐられる実体験を語るなんてすごい・・と
感激して、それから惹きこまれました。
読書歴と同時に著者の半生も語られていてそれも興味深い。
本にハマっていく様子や、
少年時代のその時々でどんな本とどんな風にであったか。
また、特定のキャラクターを演じていた少年時代の胸の裡。
同級生や先生などまわりの人の反応など、
著者のファンにはたまらないエピソードだらけ。
ファンでなくてもとても興味深く読んだ。
さすがに作家になるだけあって、ちょっと変わっているし、
自分の内面を深く見つめて、あれやこれや考えたり、
悩んだりしていることに感動した。
そして、著者が影響を受けた作家や本を紹介し、
著者なりの解説を加えている。
純文学の作品が中心で数々の本が紹介されていて、
この辺は読書ガイドとしても十分楽しめる。
太宰治、芥川龍之介、古井由吉、町田康、西加奈子、中村文則・・・。
著者の好きな作品の味わい方、好きなフレーズ。
いかに自分が薄っぺらな読書しかしてこなかったかを反省してしまう。
そして、ベストセラー「火花」の解説や創作の裏側も書かれていて、
「火花」と合わせて読むと感動もひとしお。
著者の作品は「東京百景」と「火花」を読んだことがある。
エッセイ集の「東京百景」はその文章と内容が素晴らしいので、
今でも印象に残っている。
読解力がないからか、
今のところ、小説よりもエッセイのほうが著者は面白いと感じる。
投稿日:2017-06-09 Fri
「熊と踊れ」アンデシュ・ルースルンド & ステファン・トゥンベリ著
ヘレンハルメ美穂、羽根由 訳
このミス2017、海外編の第1位の作品。スウェーデンの事実に基づく、
3兄弟の銀行強盗の物語。
このミス、1位の作品。
毎年ランキングが発表されるのが楽しみで、
今年も期待しながら手にとりました。
舞台はスウェーデン。ストックホルム。
レオ・フェリックス・ヴィンセントの3兄弟とレオの幼馴染やスペルが、
武器庫を密に爆破して武器を人知れず盗み出すところから始まる。
そしてその武器を手に、4人は次々と銀行強盗を始める。
リーダーは、長男のレオ。
長男らしく、責任感があり、バラバラな4人を何とかまとめようと奮闘する。
次男のフェリック。三男のヴィンセント。ヤスペル。
話がつつむにつれ、4人の個性がそれぞれ描かれていって、
4人の関係性が微妙に変化していく様子もリアルに描かれている。
肝心の銀行強盗のシーンも何度も登場するが、
手に汗して読んだ。
とにかく、リアル。
そして映像的。
緊迫のシーンを読むのは楽しみではあったが、
読んだ後はものすごく疲労感を感じた。
銀行強盗のシーンを読んでいた時は、まさに4人と一緒に銀行に押し入り、
そして4人と一緒に逃走していた。
銀行強盗の犯す現在の3兄弟の様子とともに、
幼少期の3兄弟の家族の様子も交互に描かれる。
今は絶縁状態の父と母と暮らしていた頃。
やがて父の暴力に愛想を尽かし、
3人を残し家を出ていく母。
銀行強盗を犯す兄弟のこれまでの人生。
崩壊した家庭と父との決別。
やがて、4人の関係は崩壊し、
一旦、強盗グループは解散するのだが・・・。
強盗した金で普通の暮らしを夢見る、
フェリックスとヴィンセント。
ろくでもない人生で、
一発逆転に賭けるレオ。
なんとか捕まらずにいてほしいと願うが、
やはりそうはいかない。
ラストは読むのが切なかった。
結末はある程度予想がつくのだが、
最後の最後まであきらめないレオの姿がよかった。
驚くのは、著者の一人が、実際の銀行強盗の3兄弟と実の兄弟だということ。
もちろん、銀行強盗には加わらなかったのだが、
のちのち、本作を読んだ兄弟たちは自分たちの胸のうちが、
細かく書かれていると驚いたそうだ。
上下2冊とボリューム満点。
北欧の切ない銀行強盗の物語。
おすすめです。
いつも食べてるあのお菓子の地方限定の味≪プリッツ ずんだ味≫
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