投稿日:2016-01-31 Sun
「ジャスミンの残り香 アラブの春が変えたもの」田原 牧 著
理想の社会を目指して、もがき続ける中東の国々の今の姿。
若い頃に中東の大学に留学していたという著者。
アラブの春で中東がどう変わったかを知るために、
中東を訪れて、その状況を報告している。
日本人から見ると、複雑に入り組んでいるように見える中東の国々とその情勢。
本書を読んでもそれがすっきりと解消されるわけではない。
(むしろもっと混乱するかも・・・それはないか)
とにかくいろんな派閥や氏族やグループが乱立していて、
それらの利害関係が複雑に絡み合って、
今の中東の情勢を理解するのは専門家でも難しいかもしれない。
著者はその中東の国々の報道される姿とは別の姿を
市井の人々の声も紹介しながら伝えている。
レポートの合間に、中東に関する考察や、
これまでの中東の国々の対立なんかの解説もあり、
その辺はとても参考になる。
ただ、専門用語や中東独特の表現が混じっていて、
文章としてはかなり読みにくかった。
(単語をメモしながら読み進むと理解しやすいかも)
日本でよく聞く単語も著者のこだわりで、
ちょっと違って表記されていたり。
スンニ派 ⇒ スンナ派
アラファト ⇒ アラファート
カダフィー ⇒ カッザーフィー
ヒズボラ ⇒ ヒズブッラー
ちょっとしたことだが、なんか気になってしまった。
表記としては著者の方が近いのかもしれないが。
大規模なデモの民衆の力が独裁政権に終止符をうたせることにつながったが、
少し前の日本の反原発のデモと比較して失望しているところも印象に残る。
誰もが(中東の人だろうが日本人だろうが)等しく、
もっといい社会を目指しているのは同じだと思うが、
中東の人たちの今を変えようとか、
自分たちの理想を現実にしようとして、
常に行動しているその情熱にただただ感心してしまう。
格差や貧富の差が激しいことから来るのかもしれないが、
反原発の気運が高まったと思いきや、
結局まるくおさまってしまう日本人とは大きく違う。
日々の生活を投げ出しても、
今を変えようとするその原動力は何なのか。
どこから来るのかをもっと知りたいと思った。
独裁政権が倒れて初めてわかった中東の混乱。
独裁政権がそれまであった、
軋轢や確執を抑えていたのだと思うと、
少し複雑な気持ちになる。
それでも、多くの市井の人々は革命を起こしてよかったと口にしていた。
以前より生活が苦しくなっても、
そう言える中東の人々の覚悟がうらやましい。
何のために生きるのか。
幸福とは何なのか。
物があふれた日本で、
中東の人々の姿に触れると、
否が応でもそれらを考えさせられる。
アラブの春は革命だったのか。
そもそも革命とは何なのか。
これまでの革命で成功した革命はあるのか。
そんなことも深く考えさせれれる。
革命とはプロレタリアートが行政機関と全国家機関とを破壊して、
それと武装した労働者からなる新しい機関と取り換えることにある
レーニン
革命とは自由の創設のことであり、
自由が姿を現すことのできる空間を保障する政治体の創設のことである
ハンナ・アーレント
著者が日本がデモや運動で激しかった時代の息吹を
受け継いでいることが伝わってきた。
そして中東の人々の熱い生き方への憧憬のまなざしが、
文章のあちらこちらからにじみ出ているように感じた。
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投稿日:2016-01-05 Tue
「ペテン師と天才 佐村河内事件の全貌」
神山典士 著
ゴーストライター騒動で世間を騒がした佐村河内事件。
そのきっかけを作った著者が事件発端から事件全貌を綴ったノンフィクション。
多くの人を欺いてもまったく悪びれない、生まれついてのペテン師がここに実在する。
言わずと知れた佐村河内事件。
週刊文春の告発がきっかけとなったのはみなさんご存じだろう。
その記事が掲載されるまでの過程やいきさつも本書では語られている。
著者は生まれながらにして片腕が不自由な少女(みっくん)を取材していた。
みっくんはハンデがありながらもヴァイオリンを懸命に練習して、
音楽会などで演奏を披露していた。
その様子を著者は本にまとめようとしていたのだが、
その取材の途中でみっくの家族(大久保一家)から、
当時みっくんに曲を提供してくれた音楽家の佐村河内には
実はゴーストライターがいるということを知らされる。
真偽を確認しようとゴーストライターだという音楽家に会い、
話を聞くと驚愕の事実が明かされる。
その音楽家こそ記者会見で世間から注目された新垣隆氏だった。
佐村河内事件に興味があっただけに、
冒頭から一気に惹きこまれてしまった。
稀代のペテン師、佐村河内の人生と、
地味な音楽家、新垣さんの人生が、
偶然にもクロスしてしまう。
その時から、二人の偽りの人生が18年続くことになる。
一方はただただ有名になりたいという野心や欲望だけを頼りに、
生きていた男。
一方は学生時代からその才能を認められ、
大学卒業後はすぐに母校に迎えられるが、
まったく欲望のない地味な男。
その二人のあまりにも対照的な人生が印象深い。
ペテン師とゴーストライター。
18年続いた歪な二人の関係も興味深かった。
佐村河内のペテン師としての才能(と言っていいのか)にも、
驚かされる。
被爆2世ということ。それに加えて、聾者を装い、
弱者として同情心集めて世間から注目を浴びる。
また、被災者や障害者に近づき、
曲を送ったり、見舞ったりして、
その様子をマスコミを利用して世間に広める。
日光に弱いからとサングラスをかけ、
体がきついと杖をついて人前に出る。
驚くべき、自己弱者化プロデュース力。
長髪でサングラス姿の佐村河内を初めてテレビで見た時、
何てインチキくさい奴なんだ、と思ったのを覚えている。
なぜこんなにメディアで取り上げられるのか不思議だった。
本書にはその理由も書かれている。
それは五木寛之と、アメリカの雑誌・TIME。
五木寛之は佐村河内の自伝(内容は虚偽だらけらしい)の帯を書いたり、
自身のテレビ番組の音楽を佐村河内に依頼するなど、
このペテンに大きく加担している。
五木寛之の存在でメディア担当者は簡単に騙されてしまったのだろう。
佐村河内は、ゲームの「鬼武者」で音楽を担当した際に、
掲載された雑誌「TIME」をことあるごとに、
人に披露して自分が才能ある本物の音楽家であることをアピールしている。
それはメディアの担当者には効果てき面で、
多くのテレビ番組や雑誌、新聞で取り上げられる。
それでもインチキくさいと放送や掲載をとりやめるメディアもいた。
(調べると経歴や言動に怪しいところが出てきたからだ)
やはり直観を信用するべきなのかもしれない。
決定的だったのは、NHKスペシャル。
奇跡の作曲家として佐村河内を、
手放しで称賛して取り上げて放映する。
翌日からCDの売り上げが大きく伸びたそうだ。
とてもドキュメンタリーと呼べないような番組の
制作の内幕にも触れている。
佐村河内の出身地、広島の県民性について何度も触れているが、
県民性がそれほど人柄に影響するものなのか、
すこし疑問に思った。
成り上がりの矢沢永吉を生んだ広島。
本書によると、
広島県人は、一般的に勝気でプライドが高いと言われています。
そして一攫千金を目指す野心家タイプが多いともいえる・・・
それに関連して、
広島の町の歴史や移民が多いことが紹介されているのは、
興味深かった。
騒動後、新垣さんがメディアに数々登場して活躍している姿は、
なんだか少し救われるように思うが、
佐村河内の存在がなければ、新垣さんがこれほど世に知られることもなかったと思うと、
切なくなってしまう。
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