投稿日:2015-03-21 Sat
「闇に香る嘘」下村敦史 著
江戸川乱歩賞を受賞した作品。
盲目の男が、中国残留孤児として帰国した兄が、
成りすましではないかと疑い、真相を探る物語。
![]() | 闇に香る嘘 (2014/08/06) 下村 敦史 商品詳細を見る |
メディアで取り上げられていて、
評判の一冊。
紹介されているあらすじを読んで、
面白そうだと思っていたが、
実際は想像以下だった。
江戸川乱歩賞の受賞作で、
巻末には審査員の有名作家の総評が載っている。
どの人もこの作品を評価しているので、
多くの人は面白いと感じるのだろうが、
個人的には最後まで楽しめなかった。
盲目の男の一人称で語られる物語で、
結構、書き手には挑戦的な内容。
盲目の人の苦労や心情などがよくわかるとは思うのだが、
読んでいる方としてはもどかしさが募るばかりで、
それが面白さにつながらずに作者の意図ばかり感じてしまった。
満州からの引き揚げ時に、
生き別れた兄がその後、
中国残留孤児として日本に帰国。
今は母と実家の岩手で暮らしている。
帰国後、盲目になった主人公の村上和久。
兄の竜彦に、孫の腎臓移植のドナーになってくれないかと頼むと、
検査さえも頑なに断られる。
そのことから、兄は実は、本当の兄ではなく、
兄に成りすましている別人なのではないかと疑い始める。
満州での兄のことを調べようと、
満州に住んでいた他の引き揚げ者に会って、
当時の話を聞いて回る。
その間に和久自身の人生が語られ、
盲目になって後、離婚したことなどが語られる。
そして、兄について調べ始めると和久のまわりで、
不審なことが起こり始める・・・・。
兄が残留孤児として帰国してから、
20年以上たっている。
腎臓移植を断られたことだけで果たして、
別人だと疑うだろうか。
(血縁関係か否かが検査でわかるからというのだが)
20年の間に、何度か不信感を抱くのではないか・・・、
とちょっと違和感を覚えた。
また、兄に疑惑を抱いてからも、
和久は悠長に構えている感じがした。
本当に疑惑を抱いたなら、いてもたってもいられないように思うのだが。
いろいろな人に話を聞きにいくとところは、
本当に余計な感じがした。
そんなことをせずに直接本人を問い詰めればいいものを。
あるいは、母親を。
この物語を盲目の人間に訪れる数奇な運命ととらえるか、
盲目の設定が話を無理なくするために作家が決めた意図ととらえるか。
後々自分の出生の秘密が明らかになるのだが、
それがわかったとしても、
折り返し地点を過ぎた人生で、
それほど驚き、心揺さぶられるものだろうか、と疑問に思った。
何か消化不良を感じつつ、話が終わってしまった印象があった。
展開が遅く、惹きこまれるところはほとんどなかった。
岩手の場面では、地元の人が方言なのに対して、
兄も母もほぼ標準語というのも違和感を感じた。
(些細なことですが東北出身なもので・・・)
孫が誘拐されて、
いよいよ緊迫感が増していくと思いきや、
簡単に娘が孫を取り返しくるのには驚いた。
犯人がいるところに乗り込んで行っているのに・・・。
肩すかしをくらった感じ。
満州の時代を回想する場面。
満州で日本人に土地を取り上げられた現地の女(中国人の女との記述)が、
この土地は中国人の土地だ・・・というのも
違和感があった。
当時の大陸でどの程度の人が中国人と自覚していたのだろうか。
日本人が満州に入植した当時は中国という国は、
はっきりと存在していないと思うし、
満州を支配していないのではないかと思う。
日本(関東軍)=悪
中国=善
という構図が全編を通して感じられた。
もちろん何から何まで日本が正しかったというつもりは毛頭ないが、
著者の持つ歴史感と違う立場の歴史書も読むと、
もう少しバランスのとれたものになったのではないかと感じた。
大きなテーマとして、
中国残留孤児の問題を再度日本人に認識させる・・・、
というような著者の正義感や使命感が全体ににじみ出ている。
たしかに、今、帰国した残留孤児の人がどう暮らしているのかを、
多くの日本人は知らない。
しかしながら、そのメッセージ、意図が強すぎて、
エンターテイメントの楽しみを半減させているように思う。
数え歌が出てきたり、
点字の俳句が出てきたり、
小細工と言えば失礼だが、
読者を飽きさせないような工夫があるし、
中国残留孤児や盲目の人の生活など、
きっちり調べたんだろうなと想像できるので、
労作だと思う。
ただ、読み進むのにこちらも結構労力を必要とした。
他の書評では高評価が多いので、
興味を持ったかたは読んでみて損はないと思います。
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投稿日:2015-03-15 Sun
「満 願」米澤穂信 著
2015年版「このミステリーがすごい」の第1位の作品。
多くの人が支持した作品・・・ということで、
まったく、予備知識なく読み始めました。
![]() | 満願 (2014/03/20) 米澤 穂信 商品詳細を見る |
2015年版「このミス」のナンバー1に輝いた短編集。
毎年、このミスの1位は必ず読むようにしている。
昨年はトップ10に入った著者の「リカーシブル」を読んだ。
「折れた竜骨」を合わせて、著者の作品は3作品目の読書。
まったくの予備知識なく読んだので、
短編集というのに少し驚き、
ミステリーというより、
サスペンスやホラー色が強い作品が多いのが予想外だった。
表題作を含む6篇が収録されている。
ハラハラ、ドキドキするような作品ばかり。
個人的にはあまりホラーやサスペンスはあまり好きではないが、
一番支持されているだけあって、最後までなかなか読ませる。
個人的に一番面白かったのは、
5番目の「関守」。
なんでも請け負うライターが、
都市伝説の取材のために、山奥の峠に向かう。
途中、休憩のために立ち寄った寂れたドライブインで、
年老いた女主人に、交通事故多発の都市伝説について聞くうちに、
意外な展開が待ち受けるというもの。
ラストも結構はっきりしていて、
じわじわと迫りくる感じも結構こわった。
途中からなんとなく真相がわかり始めて、
はっきりわかったころには、
もうあともどりできない。
(ネタバレになるのではっきり書けないのが残念)
逆に一番詰まらなかったのは、
4番目の「万灯」
東南アジアで天然ガスなんかのエネルギー開発を手掛ける商社マン。
未開の土地のエネルギーを開発しようと、
地元の有力首長と交渉するが、
思わぬ方向に話が展開していく。
海外での商社マンの生活をリアルな感じで描いているのだが、
前置きが長くて、結末もだいたい予想通りのものだった。
海外と日本と、舞台を両方においているためか、
なんか間伸びして感じてしまった。
いずれにしても今年(去年)、一番注目の娯楽作。
読んで損はないと思います。
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投稿日:2015-03-10 Tue
「偽証裁判」アン・ペリー 著
看護婦が巻き込まれる名家の殺人事件。
![]() | 偽証裁判〈上〉 (創元推理文庫) (2015/01/29) アン・ペリー 商品詳細を見る |
期待が過ぎたためか、あまり面白いとは思えなかった。
物語は、興味をそそられる展開なのだが。
娘の結婚式のためにロンドン行きを計画する名家の老婦人。
持病があるため、付添として短期に雇われた看護婦のへスター。
当日、指示通りに、夜、婦人に投薬を済ませ、
夜行列車で向い合せで眠りにつくへスター。
翌日、起きると、老婦人は冷たくなっていた。
単純に病死に思えたが、へスターのカバンには、
前日、老婦人が持参しなかったと言っていた、
お気に入りの高価な宝石が紛れ込んでいた。
この後、へスターの友人の弁護士と私立探偵が、
ヘスターの無実を証明しようと奮闘する。
実に面白そうな話なのだが、
あまりにも展開が遅くて、少し読むのに疲れてしまった。
良く言えば丁寧に書かれている。
悪く言えばテンポが悪く、展開が遅い。
率直な感想は、後者。
老婦人の死ぬまでが長いし、
構成も時間軸もまっすぐなので、間延びして感じた。
後々重要になるだろうことはわかるのだが、
ヘスターが初めて家に行った時のことがやたらじっくりと描かれている。
とは言いつつ、惹きこまれてしまうところもある。
家族のそれぞれ人の謎の部分が判明するところは、
とても興味深く読んだ。
また当時の時代のイギリスの生活や、
近代化や文明化の社会の雰囲気と
そのしわ寄せを受ける底辺の人たちが
ちらっと登場するところなんかはとても面白かった。
後半、法廷の場面が登場するが、
想像以上には盛り上がりがなかった。
てっきり白熱のやりとりがあって、
意外な真実がわかるのかと思いきや・・・。
裁判の結末もなんと言うか・・・・。
結末に名家の家業の秘密が明らかになるところは、
読みどころで興奮した。
構成や展開はもっと工夫があってもいいかなと思うが、
情景や心情の描写はすばらしいところがあり、
単純に惹きこまれた。
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