投稿日:2013-03-31 Sun
「シズコさん」佐野洋子 著
![]() | シズコさん (新潮文庫) (2010/09/29) 佐野 洋子 商品詳細を見る |
著者を童話作家として知ってはいたが、
エッセイストとしても評価が高かったらしく、賞(小林秀雄賞)も受賞している。
この本は、著者が母を施設に入所させたことをきっかけに、
著者と母のこれまでの人生や関係を振り返っているエッセイ。
著者は母、シズコさんを金で捨てたと告白する。
決して安くはない料金を払い、
設備の整った施設に母を入れたことを後ろめたく感じていたのだろう。
ボケてしまった母に会いに行き、
思い出されるのは母の若かりし日々。
終戦まで中国ですごし、
その後日本に引き上げてきた、著者の家族。
その思い出とともに、
母との愛憎に満ちた関係が語られる。
父の前ではいつも化粧を絶やさず、
小奇麗にしていた著者の母。
決して裕福ではなかったというが、
子供4人に料理をつくり、
洋服も手作りしていたという。
著者が19歳の時に、父がなくなり、
それからは女手ひとつで子供を育てあげている。
読めば読むほど、
シズコさんは理想の母親だと思ってしまったが、
著者は母が嫌いでしょうがなかったらしい。
大好きだった父親について。
外面のいい母親について。
ニュースにもなった、弟が起こした交通事故について。
シズコさんと弟の嫁の確執について。
辛辣に、赤裸々に、自らの母と家族について語る著者。
決して楽しいことばかりではない人生に
のめりこんでしまった。
ある程度歳をとると、
自分が子供のころの父や母の年齢に達していることに気付く。
そして自分と父や母を比べてしまう。
家族とは、母とは。
普段、じっくり考えることのない存在について、
改めて考えさせられた。
どんな家にも、どんな親子にも、
多少なりとも問題が起こり、
山や谷があるものなんだ。
それを乗り越えて、一層絆は強まり、
それでも家族は時に煩わしく、厄介な存在。
不覚にも読みながら涙があふれてしまった。
自分が親の歳になって初めてわかるいろいろなこと。
人生が残り半分を切ったら、
自分の家族と、自分の人生の終わり方を考えるように、
この本を読むのもいいと思う。
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投稿日:2013-03-20 Wed
渋谷ではたらく社長の告白 藤田晋 著
サイバーエージェントの創業者による回顧録。
意外と言っては失礼だが、とても面白く読みました。
![]() | 渋谷ではたらく社長の告白 (幻冬舎文庫) (2007/08) 藤田 晋 商品詳細を見る |
サイバーエージェント。
改めて説明するまでもないくらいの大企業だ。
著者はその創業者で、
自分の生い立ちから、大学時代、就職、会社創業、そして上場までを
振り返った回顧録がこの本だ。
著者に理由もなく、なんとなく胡散臭い感じを受けていたので
この本の存在を知ってはいても
手に取ろうとは思わなかったが、
意外にも読んでみると、
とても面白かった。
著者は高校時代に自分の会社を持つという野心を持つ。
そして大学入学で上京。
驚くのは著者は、
大学に行きながら既にサラリーマンとして働いていたということ。
自分の会社を持つというはやる気持ちを抑えられず、
そのために一刻もはやく社会で勉強しようという理由からだ。
そしてその職務は、外回りの営業。
足で稼ぐ飛び込みの営業を著者が経験していたというのは
本当に驚いた。
ITの会社の社長は、室内にじっとこもって仕事をしている・・・、
という勝手なイメージが誤解だったことがわかる。
大学卒業後、入社した会社でも勢力的に仕事をこなし、
社内でも一目おかれるようになり、
やがて起業を決意すると、
所属していた会社の社長がそのベンチャーに投資してくれることになる。
そして起業。
まるで何かのサークルでもやっているかのように、
毎日仕事が楽しくてしょうがないという印象。
そのうち、若手経営者としてメディアにも取り上げられ、
会社も規模を拡大していく。
挫折や失敗なども経験し、
やがて当初の目的の株式上場を果たす。
しかしその後、ITバブルが崩壊。
株価は下落し、株主からの批判にさらされる・・・・。
怒涛のごとく流れさる激動の日々。
読んでいると自然と著者のパワーにこちらも影響され、
何か夢中で仕事がしたくなる。
徐々に会社が発展していう様子は、
読んでいて小気味いいし、
勢力的にチャレンジする著者の姿は、
とても好感がもてる。
すべてがそろっていて、準備万端で会社を発展させたわけではなく、
綱渡り的でその場しのぎの裏側が明かされているところも興味深かった。
ほかの経営者も登場してくるのも、
興味深く読んだ。
楽天の三木谷さんやライブドアの堀江さん。
その後の運命を知っているだけに、
何とも感慨深い。
ネットに疎い著者が、
ネットの広告に注目して、
汗をかき、足で稼ぐ営業をしている姿は
青春小説を読んでいるよう。
日本のIT企業の発展史
として読んでも面白いと思う。
本田やソニーも創業当時は、
毎日がエキサイティングな感じだったんだろうと
想像してしまう。
著者は、21世紀を代表する会社をつくる
というのが目標らしい。
サイバーエイジェントの現在の状況を
詳しくは知らない。
グリーやDeNAにモバイル戦略で先を越され、
リストラや事業の主力をシフトしようとしている
というような報道を目にした。
最近は会社は株主のものという考えのもと、
株価だけに注目し、
従業員をものにように
管理する会社が増えている。
創業当時の理想を
今でも著者は持っているのだろうか。
これまで会社が大きくなると
否応なく社会的な責任も出てくる。
21世紀を代表する会社とは、
どういう会社なのかはわからないが、
激動の時代のIT企業は
これから真価が問われるように思う。
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テーマ:ビジネス・起業・経営に役立つ本 - ジャンル:本・雑誌
投稿日:2013-03-17 Sun
別海から来た女木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判
佐野眞一 著
木嶋佳苗のノンフィクションは「毒婦」に続いて2冊目。
「毒婦」とはまた違った視点で事件に迫っていて、
とても興味深かったです。
![]() | 別海から来た女――木嶋佳苗 悪魔祓いの百日裁判 (2012/05/25) 佐野 眞一 商品詳細を見る |
これまで数々のノンフィクションを執筆してきた著者だけあって、
この手の本はお手のものって感じで、
加害者、被害者ともに鋭く切り込んでいます。
著者のスタイルとして当事者の出自を探るために、
木嶋佳苗の出身地を訪れ、
木嶋家のルーツを探るために福井まで旅している。
そしてそこで木嶋佳苗につながる祖父や曽祖父の人生まで
取材している。
その土地の持つ匂いとか、風土がそこで生活を送る人間の人生に
どう影響をあたえるかというようなことにも踏み込んでいる。
このへんの取材はものすごく貪欲で、
木嶋佳苗が幼少時に貯金通帳の盗難した家の
人間にまで取材に行っている。
ちょっとこじつけ的とも思える、
一族の血脈とかDNAのようなものの洞察が
著者のノンフィクションの醍醐味でもある。
前半は木嶋の実家の北海道別海町などを取材した様子を記していて、
後半は裁判傍聴をもとにした記述。
裁判を通して明かされるのは、
木嶋佳苗の嘘にまみれた人生と、
上昇志向というか
セレブになりたかった田舎出身の女。
そして、その狡猾な女に簡単にだまされた
女関係にうぶで、純朴な中高年の男たち。
地方と都市。
デジタルとアナログ。
男と女。
いろいろな切り口や捉え方で
事件の本質をあぶりだそうとする著者。
すごく鋭いのだが、そのどれもが何か納得できるような
できないような釈然としないもやもやが残るのだ。
それは、この事件の主役、木嶋佳苗のとらえどころのない
人間性にもあると思う。
裁判をとおして一貫して殺人は犯していないと主張し、
死人に口なしをいいことに、
当事者しか知りえない被害者との関係や、
殺害された時の様子などを
自分の都合のいいように語っている。
普通の人にはにわかには信じられないようなことを。
検察からの追求ものらりくらりとかわし、
事件に対する反省も、
被害者に対する謝罪も一切ない。
著者もこの事件の発する、
不快な空気のようなもの、
捉えどころのなさについて触れている。
事件の真相が明らかになることはないかも知れないが、
この本は誰もが読んで損はないと思う。
本書からその理由を引用すると、
「この事件に関心をもつすべての人が、
木嶋佳苗に、そして木嶋佳苗にだまされた人に、
いくらかずつ似ている自分に無意識のうちに
気がついているからである」
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