投稿日:2007-11-19 Mon
小川洋子著 「博士の本棚」著者がこれまでに、本や雑誌なんかに発表してきた書評やエッセイをまとめた本です。
テーマや内容が統一されていなくて、バラエティー豊か。
ひとつひとつの分量もちょうどいいから、寝る前とか、トイレの中でとかでちょっとずつ読むのにちょうどよかった。
![]() | 博士の本棚 (2007/07) 小川 洋子 商品詳細を見る |
何とも心穏やかになる本です。
この本を読んで、著者の文章とその背景にある哲学とか価値観みたいなものを、いかに自分が大好きかを再確認しました。
(30過ぎのいいオッサンなのに、お恥ずかしい)
読んでいて、一編一編が本当に心地よかったです。
書かれている内容は本当にさまざま。
書評や映評、それから日々での出来事、数学の事。
少女時代、大学時代の思い出・・・などなど。
書評で取り上げられている作家や作品で、著者の小説の好みや小説観がわかるし、小説の味わい方なんかも勉強になる。
村上春樹、ポール・オースター、田辺聖子・・・・。
以前から、著者が「アンネの日記」に影響をうけたことは知っていたが、そのことについても語られている。
人がなせ物語を必要とするのか。
少女時代の著者が、迫害と死に直面した少女の日記に受けた衝撃とはいかほどのものだったのか。想像もつかない。
しかし、生涯を通じて何度も読み返すようなこの名作に対する著者の熱意は、すごく感じられた。(恥ずかしながら、「アンネの日記」・・・未読です。)
読書は読書を呼ぶ・・・・・・とは自分で勝手に作ったことわざだが、たくさん出てくる本や作家の話で、知らない本やまだ読んでない本なんかで、ますます本が読みたくなった。
特に、2,3回出てくる武田百合子著「富士日記」なるものは絶対読みたくなった。
日々の生活をつづっただけの本らしいが、著者はそこに宇宙の摂理があると絶賛している。
これはもう読まなきゃって感じ。
エッセイ全部いいんだけど、中でも犬のことを書いたエッセイはすばらしかった。
著者はホントに犬好きなんだなと改めて知ったし、犬のことをよく観察している。
それからまた、その犬のことを書く文章や表現がうまいね、やっぱり。
著者の本はまだ全部読んでないんでわかんないけど、もしないなら犬の小説を書いてほしいと思った。もう、これはぜひって感じ・・・。
著者は決して、好き嫌いや考えを声高には主張はしていない。
しかし、しっかりと考えの軸となるものは表現されているように感じた。
それはやはり、精神の豊かさってことかな。
ささやかな、庶民の暮らしの中でも大切なことがあるんだ。
何気なくみすごしてしまうような瑣末な出来事。何もかもが満ちたりた世界で、今一番必要なものはやはり、人間の精神的な充実ってこと。
本を読んで、さまざまなことに思いを馳せるのは正にそういうことなんだと思った。
テレビっ子の自分は毎日、何時間もテレビを見るけど、テレビや雑誌なんかでやっていることといえば、馬鹿騒ぎとか、食べ物の特集、物の特集ばっかり。
どこそこに新しい店ができたとか、この店の限定メニューは絶品だとか・・・。
そういうのもあってもいいけど、そればっかりだからね・・。
こんな時代でも、この本の帯にある「本という歓び、本という奇跡。」というような、物じゃないことについて、しかも新刊で出版されたことに、まだまだ本の世界は未来があるとちょっと感心しました。
ひとつだけ気に入らないのは、タイトルがちょっと安易すぎるかな・・・・。
でも、本当に充実した時間をすごしました。
これからも手元において、何度も読み返したい一冊です。

博士の本棚
- 小川 洋子
- 新潮社
- 1575円
書評/国内純文学


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