投稿日:2007-04-16 Mon
ポール・オースター。小説好きには、いわずと知れた現代アメリカ文学の旗手。
先日「ティンブクトゥ」を読んだばかりですが、何せその作品には定評がある作家ですので、間をおかずに読んでみました。
ポール・オースター著
「ミスター・ヴァーティゴ」
の感想です。
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まずは、ご覧の表紙が印象的。
これは、原書と同じだそうで、アメリカのマンガ家の作品だそうだ。
何となく童話的というか児童文学的な雰囲気を感じるが、実際、そういう空気を感じた。
逆さまになっているのが、語り手で主人公のウォルト。
そして、なんか不気味で怪しい男が、ウォルトの人生を大きく左右することになる“師匠”ことイェフーディー。
冒頭からいきなり引き込まれるよ。
「十二のとき、俺ははじめて水の上を歩いた」
みなし児だったウォルトがイェフーディーに拾われて、ともに生活し成長していくって話。
でも単純に絆とか感動とかの話じゃないよ。
だって、いきなりウォルトに、お前はケダモノ同然で人間としてはゼロだが、自分についてくれば空を飛べるようにしてやる・・・っていきなりそこまで言うのかって辛辣な言葉をぶつける。しかも、9歳のガキに・・。
でも、当のウォルトも負けてはいないよ。
そんな人間いるわけねぇだろ、おっさんって言い返すから。
まぁ、とりあえずはこの怪しいおっさんにウォルトはついていくんだ。
でも、待っていたのは荒地の一軒家の農場での家畜の世話。
当然、ウォルトは何度もその家から逃げ出すのだが、そのたびになぜか師匠に連れ戻されてしまう。
そのうち、ウォルトは師匠を見る目が変わってきて、空を飛ぶ練習に専念していく。
様々な出会いそして、別れも描かれていて、それも、この少年の成長に影響を与えている。
マザー・スー
イソップ
ミセス・ウィザースプーン
読み終わってみるとなんていい日々だったのかと自分のことのように感慨にふけってしまう。
スリム伯父という身内が、運命を大きく揺さぶることになったりして、決して長さを感じさせない。
それから、アメリカの歴史も一緒に描かれている。
時代は20世紀前半から戦後にかけての激動の時。
KKKや世界恐慌、第二次世界大戦。
その歴史に翻弄されるんだよ。
しかも、無残な形で・・・・。
いろんなことがある人生。いいこと、悪いこと、どうでもいいこと。
それを全部含めて人生なんだ。
どんなことがあっても、とりあえず人生は続くし、どうにか生きていかれる。
たまには、深く傷つき、ひどく落ち込むこともあるだろうけど・・・。
まぁ、人生、何とかなるもんだ。
そんな、力強いメッセージが心地良かった。
自分の人生の最後の最後、しみじみと幸せだったと感じられる人生。
そう、なれたらいいなぁ。
まだ、この先、いろいろあるだろうけど、この本にちょっとエールを送られた感じがした。
ほっと安心できるような・・。
訳者があとがきで書いているように、イキのある語りで、辛辣で残酷で現実的な内容もなんかちょっと軽い感じに読めるので、全編とおしてまったくたるみみたいなものを感じませんでした。
読み始めてすぐに、この物語がいとおしく感じて、すこしも離れていたくなかったです。
途中、悲しい別れのときは、ホントにジーンとして、あれだけ粗野で野卑だったウォルトが良くぞここまで成長してくれたと涙がでそうでした。
一人の人生を掘り起こせば、どんな人にでも、いろいろあるでしょ。
それを、じっくり味わった感じ。
でも、これだけ波乱万丈なひとはそうはいないけど・・・。
生きていく勇気を感じ、人生について想いを馳せる一冊です。

ミスター・ヴァーティゴ
- 著:ポール オースター
- 出版社:新潮社
- 定価:740円
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