投稿日:2006-10-12 Thu
映画化もされた「明日の記憶」がベストセラーとなった荻原浩。この著者の短編集が、週刊ブックレビューで取り上げられたので何となく読んでみました。
というわけで今日は荻原浩著
「押入れのちよ」
の感想を・・・。
![]() | 押入れのちよ 荻原 浩 (2006/05/19) 新潮社 この商品の詳細を見る |
この著者の作品に触れるのは今回が初めて。
だから、どんな作家なのかはまったくつかめないまま読み始めました。
一言でいうなら、
安定した筆力の娯楽作家
といった感じです。
表題作をはじめとする9編の短編が収められていますが、どれも死や異界にまつわる内容があり、希望や恐怖や笑いなど様々な感情をそれぞれ引き出してくれます。
まぁー、楽しめました。
序盤は、作家の実態がつかめないから恐る恐る読んでいたけど後半はもう完全にハマッたよ。ページを繰る手が止まらないほど面白かった。
「明日の記憶」ってたしか感動する話だったとおもう。
だからこの本も、人生に敗れた人が何か新たな希望の光を見つけてそれに向けて力強く歩き始めるというような内容かなとうっすら考えていたが、ぜんぜん違いました。
ホラーやブラックなコメディーなど悪意に満ちているものが多く、この著者はこういうものの方が本来の魅力なんじゃないかと思ってしまう。
表題作は、失業中の男が家賃の安いアパートを借りたら押入れに明治の時代の少女の幽霊がいたという話。
どっちかというと感動する話で、男の再生の物語。
これはこれでいいですよ。
でもオススメは、やはり悪意の短編。
「殺意のレシピ」「介護の鬼」「予期せぬ訪問者」「木下闇」
の4編。
著者の初期の短編にあたるこれらはもう一気に読めます。
書いてるほうもノッて書いてる感じがした。
倦怠期の夫婦が互いに食事に毒を盛りあう、「殺人のレシピ」
介護を偽りながら、実際は寝たきりの義父を虐待していた女が、義父からの復讐におびえる「介護の鬼」
愛人の死体の処理中に、部屋に詐欺師がやってきた男の困惑を描いた「予期せぬ訪問者」
幼いころに親戚の家で失踪した妹の事件の真相を知る「木下闇」
なかでも「介護の鬼」は、中年女の腹の中を思う存分描いている。
くすくす笑いながら読んで、最後はちょっとすっきりするような読後感でとても面白かった。
力のある作家だろうと容易にわかるほどどれも読ませます。
とっつき難さもあまりないし・・・。
秋の夜長に、たっぷり楽しめる一冊です。
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