投稿日:2006-09-11 Mon
各方面で話題となっているこの本。著者のことはまったく知らなかったが、とりあえず読みましたので、今日はその感想を・・・。
藤原新也著「渋谷」
![]() | 渋谷 藤原 新也 (2006/06/01) 東京書籍 この商品の詳細を見る |
この本がどういう本なのか、一言で言うのは難しい。
著者の職業は、カメラマンだ。
この本には、3人の女が登場してくる。
著者が仕事で少女を撮影することになり、一般の少女にモデルの募集をして、そのオーディションを兼ねた面接で出会った少女。
渋谷の交差点で見かけた、母親を罵倒していた少女。
自身のHPに載せた、電車に座り込んでいる少女達の写真にメールをくれた、かつて援助交際をしていたもと少女。
日本の社会がこれほど豊かになっても、幼い少女達はそれぞれ胸を痛める問題を抱えている。
この本に出てぃり少女達は、母親との関係や母の愛情を確認できずに満たされない想いを抱いている。
行動や着る物などすべて母に決められていた少女。
大学教授の娘というイメージを崩さないように、優等生を演じていた少女。
子育てをほぼひとりで背負い、すべて責任を負う現在の核家族の中の母。
その社会が、いかに不幸な親子関係をもたらすか、能力以上に子育ての責任を母親に押し付けているかを訴えている。
還暦を過ぎた著者が少女達を観察して、現代の社会や家族の問題やひずみを考えているのだか、どうしても行間にエロオヤジのスケベ心が透けて見えてしまった。
しかし、そんな邪なことだけではなくちゃんと問題の奥を考察しているところはさすが評価されているだけある。
まず、核家族の問題点。
昔の第一次産業時代の大家族では、子育ての負担は母親だけでなく、祖父母、伯父伯母、親戚などに分散されていたが、企業社会になり、核家族が増えると、子育ての負担が母親に集中し、母親は一人孤独に、子供を育てなければならない。
それから、写真を撮る行為で多くの少女達が見違えるように生気を取り戻したという事実。
撮影という行為を見事に定義してそれに答えている。
「写真を撮るという行為はいまの姿にスポットを当て、彼女たちの存在を肯定する行為であるとともに、一切の社会的約束事を排除する行為でもある。そこにあるまなざしは、彼女らの生まれ、育ち、性格、学歴や成績、そして彼女が何歳であり、どのような名前を持つのか、という基本情報すら必要としていない。ただひたすら目の前にあるものの本来の姿を見つめ、引き出そうとするある意味非社会的なまなざしである」
「撮影という行為は撮られる人にスポットを当て、世界の中心に立たせる行為である。
写真とは文章や絵といったほかのメディアと異なって目の前にある“いま”を写しとり、表現するメディアだ。つまり写真行為とは被写体となる人の“今現在の姿を肯定する”行為である」
それから、幼児虐待とともに問題となっているネグレクト(育児放棄)。
これは、場合によっては虐待より子供に深い傷を負わせるらしい。
虐待は、子供達に暴力をふるうが、子供の存在を認めた上での行為だ。
「負の愛情」といえる。しかし、ネグレクトは、完全にほったらかしにされ、存在さえも認めてもらえないからだ。
現代の都市の抱える問題を、いろんな形であらわしている。
いろんなことを考えさせられたな。でも、読みやすく平易な文章だ。
著者の社会や若者に向けるまなざしの繊細さに、感動する一冊です。
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