投稿日:2006-08-14 Mon
カズオ・イシグロの「わたしを離さないで 」のあまりの素晴らしさの感動とその余韻がさめやらない今日この頃・・・・。ちょっと、気分を変えようと、久しぶりのミステリーを読んだので、今日はその感想を・・・
ローリー・リン ドラモンド著
「あなたに不利な証拠として」
![]() | あなたに不利な証拠として ローリー・リン ドラモンド (2006/02) 早川書房 この商品の詳細を見る |
タイトルの言葉は、映画やドラマでアメリカの警官が容疑者逮捕のときに告げる、
“ミランダ警告”の一部だ。
「あなたには黙秘する権利がある。あなたの発言は法廷で不利な証拠として扱われる可能性がある」
舞台は、アメリカ・ルイジアナ州のバトンルージュ市警。
そこに勤務する5人の女性警官を主人公に、10編の短編・中編が収められている。
著者は、実際に制服警官として5年間勤務した経験があるようで、警官の日常の仕事が、そのディテールまでしっかりと描かれている。
殺人事件から、交通事故の処理、錯乱して暴れている男への対処など様々な事件事故が起こる。
しかし、事件が起こって、捜査をして、容疑者を追い詰める・・というような事件簿ではない。
女性警官の目をとおして、発生した事件の様子を描く。そして、長年警官として働いてきて、事故で怪我を負って退職した警官や時には同僚に傷つけられたり、みずから警官として成長したりするその姿がそれぞれの主人公で描かれている。
読んでいて、アメリカの警官の様子がホントによく分かる。
もうすぐ夜勤が終わる頃に、交通事故が発生して現場にいかなければならなかったり、同僚が、丸腰の人間を撃ち殺して、想い悩んだり・・。
すごいのは、やはり、事件や事故の現場の描写。
死体の様子や匂い、音。それは、ほんとに生々しすぎて、気分が悪くなる。でも、その現場で捜査や死体処理をするんだから頭が下がる。
だって、こんな匂いだよ・・・。
「腐った肉やバナナの異臭」
「何週間もたったオレンジのつんとする匂い」
「ほとんどの死体は、尿と糞便の匂いがする。・・・・死ぬと膀胱や腸の出入口の調整が効かなくなり、筋肉が弛緩し、体内に残っていた無駄なものはすべて外へ流れ出る・・・」
「死後硬直が始まると、死体は膨張して大きな黒い水泡となり・・・そのときの匂いは味になる。わたしは死の味が舌や喉や肺をびっしり覆ってしまうとは知らなかった」
すごいよ。死体って相当くさいもの・・・。この描写だけでも、読んだ価値あるね。「味になる・・・」って実際体験しないと書けないでしょ・・・。
ただ、グロいだけじゃなくて、女性警官が深く傷ついてしまった自分を何とか保とうとする苦悩が繊細に描かれている。
それが、この本を更に豊かにしている。
精神的にも肉体的にも、やはり警官って大変だよ。
今度、お巡りさんにあったら感謝しよう。心の中で・・・・。
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