投稿日:2006-08-09 Wed
ブッカー賞、といえばイギリスでもっとも権威のある文学賞。「日の名残り」でその賞を受賞したのが、日系のイギリス人作家、カズオ・イシグロです。
各国で、新たな傑作の誕生と話題になっているイシグロの新作を今日はご紹介。
カズオ・イシグロ著
「わたしを離さないで」です。
![]() | わたしを離さないで カズオ イシグロ (2006/04/22) 早川書房 この商品の詳細を見る |
物語は、31歳の介護人、キャシーの回想で語られています。
幼い頃、施設「ヘールシャム」で暮らしていたキャシー。
その頃の思い出と、友人のルースやトミー、そして、保護官の先生たちとの出来事が繊細なタッチで綴られていきます。
この、施設が一体どういうものなのか。
読者は、なんとなくはつかめるが、そこにある、独特の雰囲気、物悲しい空気に何か違和感を感じながら、物語に引き込まれていきます。
キャシー達は、どういう境遇の子供たちなのか。
読みすすめるうちに、驚愕の事実が次第に明らかになっていく。
この設定が、書評では、まず話題の中心になっている。
(SFチックだという感じ・・・・・)
でも、俺は、その設定よりも、著者の表現の的確さや緻密さに感動しました。
誰にでもある、友達との感情の縺れや勘違い。
それらの出来事を丹念に描き、その心の襞の一つ一つを丁寧に描いている。
そして、その、比喩のセンスの良さ。
ほんとに読んでいて、キャシーの心の揺れをどんなに些細なことでも、
しっかりと表現している所に、この作家の偉大さを実感した。
それから、そのテーマの奥深いこと。
もし、はじめから終わりがわかっていたとしたら、その人生は生きるべき価値があるのか。
そして、
どういう風に生きていけばいいのか。
つかの間の希望や目の前の目標を頼りに、生活できるだろうか。
将来に、まったく向上する可能性がないと分かっていながら・・・。
それから、翻って、一般の人生を考えてしまう。どう生きるべきかを。
可能性が残されているのだから・・・。
文学の奥深さをまざまざと見せつける、とても重厚な一冊。絶賛される理由に納得。
オススメです。
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