投稿日:2008-05-03 Sat
鈴木敦秋著 「明香ちゃんの心臓
〈検証〉東京女子医大病院事件」
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久々に重厚なノンフィクションの感想です。
読んでいてなんとも切なくなります。
タイトルにもなっている平柳明香ちゃんは、生まれつき心臓に不具合があり、中学に入学する前にその心臓の不安を解消しようと手術を決意する。
そして、その分野の日本の権威といわれる東京女子医大病院で手術をするのだが、数日後に死亡してしまう。
読んでいて、何よりも、名門といわれる東京女子医大の病院の患者を単なるものとしか思ってないような冷たい対応に驚かされる。
実際、両親の利明さんとむつ美さんはそれにもおどろき、手術を躊躇するのだが、それ程むずかしい手術じゃないと担当医師にいわれ、不信感を抱きながら手術の覚悟を決める。
この辺は、ほんとに緊迫する。
自分の身内を想像しながらよんでいたから、本当に胸がしめつけられる。
そして、予定を大きくオーバーして終わった術後、集中治療室で対面した娘の姿に二人は驚愕する。
顔は晴れ上がり、鼻と耳から出血していた。
明らかに状態が思わしくないのがわかる。
歯科医の利明は医療事故をすぐに思い浮かべ、やがて、病院側と明香ちゃんの手術の真相をめぐって争う。
心臓を手術するということで、血液を循環させるポンプ役を機械にさせなくてはならない。
事故はその機械が原因となって発生する。
実際の手術を担当する医師と機械を操作する医師。
その責任の所在が争われる。
このあたりはとても専門的で、ちょっとわかりにくかった。
それだけに現在の医療は本当に専門的になっているんだと実感しました。
娘の死の真相を求めて病院側と交渉する父。
精神的にも相当な負担があったと思う。
しかし、同じ医療に携る人間として、娘の死を受け入れ病院側の誠意ある態度に納得するのだが、その後、手術を担当した医師が逮捕されたことで、再び、医療の問題点を指摘する立場になる。
そして、医療の問題は法廷ではなく、医療の現場で解決しようと他の医療事故の被害者と一緒に活動すること。
単純に、被害者側から病院や医師を糾弾するというだけでなく、現在の医療現場や大学病院のシステムの矛盾などをとりあげ、問題提起している著者は姿勢は、すごく共感できる。
病院はまずは患者を第一に考えるべきとする基本に立ち返って、いちから医療を考え直す時期が来ているのだ。
日ごろから病院を利用している身からいうと、ほとんどの医師や看護婦さんが立派に働いていると思いますが・・・・。
読みどころは他にもある。
東京女子医大の発展と名医師の存在。
医療事故の遺族の複雑な思いと被害者感情だけをあおるように単純な報道をするメディアとの葛藤。
読後はなんとも空しい気持ちになる。
新しい試みとしてはじまった、患者と医師がともに医療事故を語りあうというシステムも必ずしも成功してはいないようだった。
しかし、未来の日本の医療のために、活動した平柳夫妻は本当に立派だったと思った。
そして、心からのお悔やみを言いたい。
誰もがお世話になる医療。
他人ごととは思わずに一緒に考えて見ましょうよ。
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投稿日:2008-04-12 Sat
斉藤守彦著 「日本映画、崩壊
〜邦画バブルはこうして終わる〜」
タイトルも、そして、装丁も何か狙いすぎって感じがしますが・・・。
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長年、映画雑誌で記者をしていたという著者が、現在の日本映画をあらゆる面から問題点を提起している。
かなり、ひきつけるタイトルなんですが、内容はというと・・・・。
それほどでもないかなって感じでした。
興行収入が増えて、邦画の占める割合が増えたけど、各地に乱立するシネコンがその理由で、邦画が熱いっていったって、ほとんどがテレビ局が製作にかかわっていて、もしテレビ局が手を引いたらどうなるかわからないし、劇場でポップコーンを売っている兄ちゃんはバイトだから、接客ができていないから、お客は離れていくだろう。
まぁ、そんなことが書かれてありました。
劇場のコンセッションのバイトの態度まで丁寧に取り上げているのにはちょっと笑ってしまった。
崩壊とはいったい何を意味しているのか。
質と量のどちらかということになるのだが、冒頭で興行収入についてのデータを取り上げていて、そのあと、作家性が失われていると嘆き、そして、後半はまた、映画人口について語る。
映画人口が増えていることを喜んでいるようにも思えないし、逆に良質の作品がでてきているとも言っていない。
ただ、悪いところだけとりあげて騒いでいるように感じた。
日本経済が不況の数年前、日経新聞が、ものが売れないとか、失業がどうとか、不況だ!不況だ!と不況の記事しか載せないときがあって、そのときは「日経不況」と揶揄されたと経済評論家が言っていたのを思い出す。
確かに著者の言うような事実はあると思うが、日本のほかの産業で何から何までうまく行っている業界があるのだろうか。むしろ、何かしらの問題とか課題を抱えている産業がほとんどだと思う。
だとしたら、わざわざ崩壊・・といわなくても、問題があることが普通な状態だと思うのだが。
全編に漂う、著者の斜に構えた姿勢にどうもなじめなかった。
それでも、参考になるところはあった。
映画に求めるものが、「感動」と「共感」であり、現在の観客はどちらかというと「共感」を映画にもとめていて、テレビの延長として映画を捕らえている。
それで、映画館も家でテレビをみるようい快適な空間を作らなければならず、シネコンが発展した。
製作より興行を重要視した映画会社が生き残ったとしているが、その先のどうすればいいかを提案してほしかった。
たぶん、今のこの流れはしばらく続くと思う。
著者のいうように当日の料金を一律1000円にすればいいし、複雑な配給・興行システムをもっと自由にしてもいいと思ったが・・・。
新しい試みや動きなんかも報告してほしかった。
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投稿日:2008-03-04 Tue
「官邸崩壊 〜安倍政権迷走の一年〜」 上杉隆 著
話題の本です。
著者は元NHK記者で、鳩山邦夫代議士の元秘書です。
かなり、突っ込んだ感じで、官邸や政府の人間模様を描いています。
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話題だけあって、とにかく面白かったです。
物語風にどんどん流れていく感じで、読みやすいっていうのもありますが・・・。
密室であった出来事や発言まで克明に記していて、“ホントかよ”って突っ込むところは多々ありましたけれど・・・。
この本で、(前からかも知れないけれど)著者は同業者からは相当嫌われているらしい。
政治家やその秘書はもちろん、安倍政権にベッタリだった記者も実名で書いている。
そして、語り口が明快で、辛辣。
まぁ、普通ならいえないようなことを結構書いているよ。
人物評というか、その人間の仕事に対する能力の評価を・・。
ちょっと引用してみますと・・・。
平沢勝栄・・・「何よりもテレビ出演を重視する政治家」
井上義行(首相秘書官)・・・「安部を心底崇拝する。安部への批判は自らへの挑戦とさえ考える。」
桜井よしこ・・・「保守派の代表的なジャーナリスト、もっとも影響力のある言論人の一人」
中川秀直・・・「人と目をあわせて話さない、これ見よがしに内緒話をするといった仕草が、誤解を与える。演説は退屈。政策面で抜群の先見性を発揮しながら、語ることを好まない。だがブログの更新は欠かさない。つまり、いつまでも新聞記者だった特性がぬけないのである。」
世耕弘成・・・「広報のプロ。愛嬌のある体躯に似合わず、理路整然と話す行動の政治家。笑顔に隠された攻撃性が、眼鏡の奥の鋭い視線に見え隠れする。
(二冊の自著を出したこのについて・・)「ジャーナリストという第三者が書くからこそ、謎に満ちていた彼の評価は上がるのだ。だが、自らを2度にわたって、自身の仕事を自画自賛したことで、広報関係者の間での世耕の株価は一挙に暴落する。一夜にして、「切れ者」から、「愚か者」になったのだ。」
阿比留瑠比(産経新聞記者)・・・「安部との関係を隠すどころか、自身のブログで誇らしげに語っている。安部との親密さを謳い、そのブログをまとめた本の出版記念パーティーには安倍官邸の錚々たるメンバーが参集した。紙面に載せられないような内容も、ブログで堂々と公表している。民主党のような勢力を蛇蝎のごとく嫌っている。ブログにも頻繁に民主党への攻撃がエントリーされる。代わりに安倍に対しては驚くほどの共感を表明している。阿比留は、偏ることを恐れない。もはや他の記者とは違う世界に存在している。ペンの力で安倍政権を支えるという、政治的使命を抱いた「運動家」なのだ。」
石橋文登(産経新聞記者)・・・「驚くべき胆力の持ち主だ。他社の記者からの評価など全然気にしない。リベラルな政治家をやはり蛇蝎のごとく嫌っている。そうした連中を見かけると、本人の前でも平気で文句をつけるのだ。記者クラブに所属しながら、その“仲良しクラブ”的体質とは最も遠くにいる記者といえる。
石橋は誰であろうと、ブレることを許さない人物だった。記者というよりも活動家の域に達している。」
安倍政権。
出だしはよかったんだけど、次々と起こる問題や不祥事にたいする対応がまずかった。
振り返ればほんとに、こんなに問題があったんだなぁ・・・と感慨深かったですよ。
教育再生会議とか、大臣の辞任と自殺。
問題が起きたときの対応が以下に稚拙で、まずかったのかがよくわかる。
誰が、いつどういう対応をするのか。
それが、はっきりとしていなかったんだね。
つまりは、安倍政権には「飯島勲」がいなかったんだよ。
小泉首相の首相秘書官だった、この人がいかにそつなく仕事をこなしていたかを語っているほんでもあるね。
知らなかった事実もあった。
サミットが開催されるホテルがセコムの持ち物で、洞爺湖でのサミット開催を強力に推したのが警察庁長官だという理由とか・・・。
語り口が鮮やかだから、どこまで信用できるか考えてしまうけど、
とりあえずは面白く読みました。
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投稿日:2007-09-30 Sun
最近裁判傍聴が静かなブームで、関連本もベストセラーになってますが、この本の著者は裁判傍聴では、阿蘇山大噴火さんとならんで草分け的存在。傍聴歴が長いだけに、面白い裁判のポイントをおさえて紹介してくれてますよ。
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かくいう私も何回か傍聴に行ったことがありまして、感想は、なんと面白いことか。
世の中、法を犯して人生を破綻させている大人がこんなに多いとは・・と唖然としますよ。
犯罪を犯した被告とは言え、大の大人がしょんぼりと肩を落としている姿や、人前でオイオイとなく姿は、どんなテーマパークでも見られないもんね。
この本にも、いろんな被告人が出てきますよ。
盗み働いた奴とか、スケベなことをした奴とか・・・。
傍聴するとわかりますが、実際の法廷はドラマなんかにあるような緊迫感なんてあまりないんですよ。
この本を読むとそのゆる〜い感じが良くわかりますよ。
被告だけが法廷の主役じゃない。
むしろ、裁判官や検察官、弁護士のほうが面白かったりするんだ。
裁判傍聴が気になる人も、そうでない人にもオススメ。
道を踏み外した人の人生を味わえる一冊です。
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投稿日:2007-09-22 Sat
単純にタイトルに惹かれて手にとって本です。しかし、その内容は驚愕のものでした。
ほんとびっくりするよ。そして、何とも言えないいやな気分になる。
福田ますみ著
『でっちあげ「殺人教師」事件の真相』
少し大きい文字の感想です。
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この本の事件。まったく知りませんでした。
この後におきる中学を舞台にした先生がいじめを主導していた事件は知っていたんだけど。
その事件とは・・・。
朝日新聞の西部本社版の報道で、世間に知られるようになるのだ。
その内容は福岡市内の小学校で、生徒が担任からいじめとも取れるような体罰をうけているというもの。
その体罰は、担任教師が家庭訪問のときに、その生徒が外国人の血を受け継いでいるという事実を知ってから始まり、「血が穢れている」「汚れた血」などと発言して、耳をつかんだり、鼻をつかんだりして生徒に出血させたり、文房具などの勉強道具をごみ箱にすてたりした。
取材に対して、学校側も体罰の事実を認め、生徒の両親に謝罪したという。
その後、週刊文春が「殺人教師」としてとりあげ、他の新聞やワイドショーにも取り上げらて話題になる。
その体罰のひどさに誰もが驚き、怒りを覚えたようだ。
問題の「殺人教師」は、その後担任をはずされ、停職6ヶ月の処分を受ける。
コレだけだったら、最近の先生はホントにひどいもんだ。先生っていったいどうなっているんだということになるのだが、その後、体罰を受けた両親が精神的苦痛を受けたとして、損害賠償を求めて民事裁判を起こしたことで、意外な事実が明らかになる。
どうですか。
読みたくなんない?
もう、一気に読みましたよ。
だって、その内容がほんとにすごいから・・。
まぁ、想像つくと思いますが、ひどい体罰とか「穢れた血」、生徒が受けたPTSDという精神的なダメージなどほとんどすべてが、裁判で否定され、母親の嘘だった可能性が高いとわかるんですよ。
一体、なんでって言いたくなるような展開。
この「殺人教師」とされた先生は、体罰どころか生徒に慕われ、人気があった先生だったらしい。
新聞や週刊誌で「殺人教師」の報道が過熱しているなか、地元では、この先生の評判をしっている人は、事実とまったく違うと口々に言っていたらしい。
加えて、体罰をうけたと再三再四学校に抗議にいっていたこの母親が様々な問題を抱えていることをみんな知っていたのだ。
体罰は、「血が混じっている」として当初から人種差別を含んでいるされ、裁判ではその事実が争われるのだが、母親の語っていた祖父がアメリカ人だとか曽祖父がアメリカ人だという事実が確認できなかったことから、しだいにこの母親に疑惑の目が向けられる。
その上、生徒が体罰が原因でなったとされるPTSDなる病気も、母親以外誰一人その症状を確認できず、これも母親の虚言の可能性が高いことが判明する。
しかし、そんなに単純にことはすすんだわけではなく、この「殺人教師」は、四面楚歌のなか自らの潔白を証明するため家族の支えをうけて戦うのだ。
だって、数あるマスコミがこぞって自分のことを極悪非道な人間だと報道するのを、一切の反論も許されずに見ていなきゃいなかったんだから、その苦痛は想像を絶するよ。
裁判では、母親側の弁護士は550人も名を連ねていて、こちらは味方になる弁護士がなかなか見つからなかったんだから。
結果的には二人の弁護士が見つかるのだけど・・。
それにしても550人って異常じゃない。
この数で自分達の側の正当性を主張しているのだろう。
なによりもこの母親の虚言に驚くね。
一体なんのために、まったく罪のない教師を陥れて人生を狂わせてしまったんだかがわからない。
単にこの教師が気に入らなかっただけなのか。
そして、学校の事なかれ主義で親のいうことを確かめずにうけいれてしまった校長や教頭の罪も重いね。
とにかく、頭を低くして嵐が過ぎるのを待とうと親にとりあえず謝罪しろと教師に指示する。
最後にマスコミ。
はじめにこの事件を取り上げた朝日新聞もひどいけど、その後を受けた週刊文春と西日本新聞。
裁判でほとんど体罰や人種差別のような事実がなかったことがわかり、著者は、この事件を報じた週刊文春の西岡研介記者と西日本新聞の野中貴子記者に取材するが、考えをかえている様子はなかった。
弁護士、マスコミが極悪教師という先入観で、事実をちっとも調べずにこの事件を暴走させたのだろう。
しかし、地元の人は事実と違うと大きな違和感を感じていたようだ。
でっちあげ・・・。
それは、母親の虚言が作り出した体罰教師だった。
しかし、そのでっちあげにマスコミも大きく関係していたことがショッキングだった。
われこそが正義というように体罰教師を糾弾する記事を創作した様が浮かんでくる。
この事件を報道した記者は現在どうすごしているのだろうか。
訂正記事を載せるなり、教師に謝罪なりしたのだろうか。
ちなみに新潮社のサイトのこの本のところで、この事件のその後が紹介されている。
それを読むとこの被害者だとされる母親と弁護士と、PTSDを認定した医師にさらに腹が立つ。
大変な思いをしたこの先生に、誇りをもって教壇にたってほしいと心から思った。
しっかりと取材をしないマスコミの姿に驚愕の一冊です。
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