投稿日:2008-03-26 Wed
季刊「銀花」編集部編 「“手”をめぐる四百字
文字は人なり、手は人生なり」
「週刊ブックレビュー」で紹介されていた本です。
帯にこの本の特徴が載っています。
著名人の肉筆原稿がそのまま載っている本です。
![]() | “手”をめぐる四百字―文字は人なり、手は人生なり (2007/01) 白洲 正子 商品詳細を見る |
50人分の肉筆原稿ですよ。
結構、濃いものがありますね。
エーッ、これがあの人の字・・・・って感じで意外な字もあれば、
いかにもって感じで想像通りの字もある。
字と、手にまつわるエッセイの内容でもっとその人のことを好きになったりもした。
よかったのは、作家の角田光代さん。
すっきりとした字で、お母さんの思い出を書いている。
それから、作家の小川洋子さん。
かわいらしい字。想像通り。
出版社で見たことを書いている。
それから単純に好きな字は、なくなったドラマ演出家の久世光彦さん。
人柄がでているようなじですなぁ。うまいし、読みやすい。
小沢昭一さんの字もすごくいいね。ふつうに読めるし、うまい。
逆にとても本人以外は読めなさそうな字のほうが多いですよ。
柳美里・橋本治・山田太一・・・・。
それから明らかに字を見られることを前提にして、書きなれている人もいる。
永六輔さんの字はその代表。
ちょっといやみに感じるけど・・・。
やっぱ字はきれいにこしたことはないよ。味があるってのはわかるけど。
字が汚いと、こんな字を書いていて世の中に、何か物申しているのかって思うし・・・。
どの人の字がいいか。実際手にとって見てください。
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投稿日:2008-03-01 Sat
村上春樹著「走ることについて語るときに僕の語ること」
村上春樹の新刊。
当然、ベストセラーランキングにも登場。
ということで迷わず、手にとりました。
![]() | 走ることについて語るときに僕の語ること (2007/10/12) 村上 春樹 商品詳細を見る |
タイトルからもわかるとおり、小説ではなくて、マラソンやトライアスロンそしてそのレースに出場するためのトレーニングについてのエッセイだ。
よんで、久しぶりの著者の文章の心地よさを改めて実感。
すいすい読めてしまう。
運動を好んでするほうではないのだが、なかなか面白かった。
それは、体とかスポーツのことを語りながら、ところどころ、人生論や小説論、作家論が織り込まれている。
それが、自然にでてくるので、スゥーっと体に入ってくるようだった。
村上春樹的な表現も満載。
比喩、断言。それも、小気味いい。
そして、ハワイとかニューヨークとかアテネとかワールドワイドなマラソンエッセイだからちょっとおしゃれな気分になれる。
いつもの著者の作品のように。
こっちは毎日のように納豆を食っているような生活をしているんだけど・・・。
気にいったところをちょっと引用します。
「長編小説を書くという作業は、根本的には肉体労働であるとボクは認識している。文章をかくこと自体はたぶん頭脳労働だ。しかし、一冊のまとまった本を書きあげることは、むしろ肉体労働に近い。もちろん本を書くために、何か重いものを持ち上げたり、早く走ったり、高くとんだりする必要はない。だから世間の多くの人々のは見かけだけを見て、作家の仕事を静かな知的書斎労働だと見なしているようだ。コーヒーカップを持ち上げる程度の力があれば、小説なんて書けてしまうんだろうと。しかし実際にやってみれば、小説を書くというのがそんな穏やかな仕事ではないことが、すぐにおわかりいただけるはずだ。机の前に座って、神経をレーザービームのように一点に集中し、無の地平から想像力を立ち上げ、物語を生み出し、正しい言葉をひとつひとつ選び取り、すべての流れをあるべき位置に保ち続ける・・・そのような作業は、一般的に考えられているよりもはるかに大量のエネルギーを、長期にわたって必要とする。・・・・・・」
多くのベストーセラーを生み出す著者の、実にストイックな生活がよくわかる。
ほんの中でも書かれていたが、名作小説を作り出すために、著者は普通の人が楽しんでいるようなことをすべて生活から追い出している。
それができるかできないか。
それも、作家の条件のような気がした。
小説以外でも、著者の文章の虜になってしまった。
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投稿日:2007-11-21 Wed
清水義範著 西原理恵子絵「独断流『読書』必勝法」
独断流・・・とは言いながら、以外と正統派な印象です。
![]() | 独断流「読書」必勝法 清水 義範 (2007/05/08) 講談社 この商品の詳細を見る |
日本と世界の名作を、再読してその印象やら作家の技や力量なんかを解説していますよ。
西原さんのイラストもなかなか毒舌で、作品と関係ないことも描かれていたりして、いいスパイスになっていました。
名作・・・。
結構読んでないんですよね。
そんな人にもわかりやすい文章で解説してくれているんで、本当に全部読みたくなっちゃいました。
ほとんどの名作に共通することは、やっぱり名作と呼ばれている作品は
いいってこと。
やっぱ読まなきゃ。
でも、流行のベストセラーとかに、ついつい手が伸びちゃうんですよね。
ちょっとしたトリビアがあってそれも楽しかったです。
たとえば「ロビンソン・クルーソー」ってどういう人間なのかとか、
「ガリバー漂流記」がそれを意識して書かれていたようだとか・・・。
それからほかでも言われていることだけど、同じ本でも読む年代でまったく違う感想を持つということ。
十代のときに読んだ印象とまったく違ったと著者も言っていました。
最後に清水さんのオススメ本のリストも載っているから、ベストセラーにあきあきしている人、まだ名作に触れていない人にはピッタリだと思った。
読書欲をますます書き立てられましたよ。
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投稿日:2007-11-19 Mon
小川洋子著 「博士の本棚」著者がこれまでに、本や雑誌なんかに発表してきた書評やエッセイをまとめた本です。
テーマや内容が統一されていなくて、バラエティー豊か。
ひとつひとつの分量もちょうどいいから、寝る前とか、トイレの中でとかでちょっとずつ読むのにちょうどよかった。
![]() | 博士の本棚 (2007/07) 小川 洋子 商品詳細を見る |
何とも心穏やかになる本です。
この本を読んで、著者の文章とその背景にある哲学とか価値観みたいなものを、いかに自分が大好きかを再確認しました。
(30過ぎのいいオッサンなのに、お恥ずかしい)
読んでいて、一編一編が本当に心地よかったです。
書かれている内容は本当にさまざま。
書評や映評、それから日々での出来事、数学の事。
少女時代、大学時代の思い出・・・などなど。
書評で取り上げられている作家や作品で、著者の小説の好みや小説観がわかるし、小説の味わい方なんかも勉強になる。
村上春樹、ポール・オースター、田辺聖子・・・・。
以前から、著者が「アンネの日記」に影響をうけたことは知っていたが、そのことについても語られている。
人がなせ物語を必要とするのか。
少女時代の著者が、迫害と死に直面した少女の日記に受けた衝撃とはいかほどのものだったのか。想像もつかない。
しかし、生涯を通じて何度も読み返すようなこの名作に対する著者の熱意は、すごく感じられた。(恥ずかしながら、「アンネの日記」・・・未読です。)
読書は読書を呼ぶ・・・・・・とは自分で勝手に作ったことわざだが、たくさん出てくる本や作家の話で、知らない本やまだ読んでない本なんかで、ますます本が読みたくなった。
特に、2,3回出てくる武田百合子著「富士日記」なるものは絶対読みたくなった。
日々の生活をつづっただけの本らしいが、著者はそこに宇宙の摂理があると絶賛している。
これはもう読まなきゃって感じ。
エッセイ全部いいんだけど、中でも犬のことを書いたエッセイはすばらしかった。
著者はホントに犬好きなんだなと改めて知ったし、犬のことをよく観察している。
それからまた、その犬のことを書く文章や表現がうまいね、やっぱり。
著者の本はまだ全部読んでないんでわかんないけど、もしないなら犬の小説を書いてほしいと思った。もう、これはぜひって感じ・・・。
著者は決して、好き嫌いや考えを声高には主張はしていない。
しかし、しっかりと考えの軸となるものは表現されているように感じた。
それはやはり、精神の豊かさってことかな。
ささやかな、庶民の暮らしの中でも大切なことがあるんだ。
何気なくみすごしてしまうような瑣末な出来事。何もかもが満ちたりた世界で、今一番必要なものはやはり、人間の精神的な充実ってこと。
本を読んで、さまざまなことに思いを馳せるのは正にそういうことなんだと思った。
テレビっ子の自分は毎日、何時間もテレビを見るけど、テレビや雑誌なんかでやっていることといえば、馬鹿騒ぎとか、食べ物の特集、物の特集ばっかり。
どこそこに新しい店ができたとか、この店の限定メニューは絶品だとか・・・。
そういうのもあってもいいけど、そればっかりだからね・・。
こんな時代でも、この本の帯にある「本という歓び、本という奇跡。」というような、物じゃないことについて、しかも新刊で出版されたことに、まだまだ本の世界は未来があるとちょっと感心しました。
ひとつだけ気に入らないのは、タイトルがちょっと安易すぎるかな・・・・。
でも、本当に充実した時間をすごしました。
これからも手元において、何度も読み返したい一冊です。

博士の本棚
- 小川 洋子
- 新潮社
- 1575円
書評/国内純文学


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投稿日:2007-07-02 Mon
ジョニー・デップ主演でヒットした、映画「チャーリーとチョコレート工場」今日の本の著者は、その原作「チョコレート工場の秘密」の翻訳者で、日本語に対するエッセイがその内容。
柳瀬尚紀著
「日本語は天才である」
![]() | 日本語は天才である 柳瀬 尚紀 (2007/02/24) 新潮社 この商品の詳細を見る |
長年の翻訳家生活で感じた、日本語が天才だということを例をあげて説明している本です。
冒頭、なぜ日本語は天才であるかと感じた理由を事細かに説明しています。
英語の言葉遊びや駄洒落的表現を翻訳するのに、日本語でも、原文の楽しさやおかしさを壊さないように翻訳して表現することができるということです。
それ程、翻訳について考えていなかったのでこの辺の記述は、納得できませんでした。
なんか、無理やり対応させても物語の流れを壊しては意味ないし・・・。
なんだったら、原文と訳文を両方書いてくれれば、それでいいとおもうのだが・・・。
その後の日本語の考察は面白かったです。
様々な文献から専門家の意見を、引っ張ってきて、自分の考えを補っています。
それだけに、納得できることばかり。
漢字を日本語の文字として取りいれて行った時の戸惑いや困難。
罵倒表現が日本語にいかに少ないか。
ルビについて。
「お」の表現について。
面白かったのは、方言について書かれているところ、そして、「七」をナナと読むのは間違いなんじゃないかというところ。
著者は、北海道の根室出身。
故郷の方言で文章を書いていますが、うれしいことに8割くらいは解説なしでわかりました。
秋田出身の自分としては、著者に親近感が湧きました。
方言の翻訳ものっていますが、微妙に意味が違う。
この意味の違いをわかるのは何となくうれしい。
改めて、自分も心の基本は田舎の文化でできていると実感しました。
それから「七」について。
著者はどうやら将棋についての専門家でもあるらしく、新聞に対局の観戦記を書いたりしています。
そのときに感じた違和感。それが、「七」の読み方。
「七段」をナナダン、「七冠王」をナナカンオウとNHKのアナウンサーが連呼したこと。
正しくは、「シチダン」と「シチカンオウ」なのだ。
そのほか、世の中に蔓延する「ナナ」病を警告している。
しかし、日本語は間違いや言い違いがそのまま表現として一般化する言語だから、まぁ、それもまたいいかって自嘲的な文章ものっけています。
著者の人柄がわかるような、程よい軽さがある文章で、結構、いい事を言っているのにまったく堅苦しさを感じませんでした。
最後の最後に載っている「いろは歌」についてのところも面白かった。
日本語の48文字全部を一回だけ使って文章をつくるというもの。
有名なのはあの
「いろはにほへとちりぬるをわか・・・・・」
です。
これがまた、言っている内容が素晴らしく高尚じゃないですか。
人生についての哲学的な教訓。
同じことを英語でやろうとすると、狐が犬を飛び越えた・・みたいな文章になるんです。
それを読んで俺も実感しましたよ。
やっぱ日本語は天才だ。
日本語の懐の深さと積み重ねられた歴史を実感する一冊です。
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